注目映画紹介:「十三人の刺客」 民のために命を捨てる覚悟で臨む13人の気高き志士たち

映画の一場面。(C)2010「十三人の刺客」製作委員会
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映画の一場面。(C)2010「十三人の刺客」製作委員会

 先ごろ開催されたベネチア国際映画祭ではコンペティション部門で上映され、7分間のスタンディングオベーションを受けるなど高い評価を得た「十三人の刺客」(三池崇史監督)が25日、公開された。63年に片岡千恵蔵さんが主演した映画を三池監督がリメーク。オリジナル作の13人対53騎による30分間にも及ぶ殺陣(たて)のシーンを、どう映像化するかに注目が集まっている。

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 江戸時代末期。将軍・家慶の腹違いの弟で、暴君として知られる明石藩藩主・松平斉韶(稲垣吾郎さん)を暗殺せよとの密命を受けた御目付役の島田新左衛門(役所広司さん)。彼は、おいの島田新六郎(山田孝之さん)や御目付組頭の倉永左平太(松方弘樹さん)ら12人を集め、江戸から明石への参勤交代の帰国の道中、斉韶を襲撃しようと計画を立てる。

 いかにも三池監督らしい、アクションエンターテインメントに仕上がっている。殺陣のシーンがふんだんに盛り込まれ、血しぶきが飛ぶ量も半端じゃない。オリジナルのクライマックスにおける30分間の殺陣シーンは、ここでは、敵53騎どころか300人の大所帯で襲ってきて、時間は50分間に拡大され、映画の後半のほとんどがそれに費やされるという豪快な結果となった。

 民に災いが及ぶのを防ぐために立ち上がった13人の侍たち。いくら正義のためとはいえ、殿を切るということは、つまりテロである。テロを起こした後の、彼らに対するそしりは免れない。それでも民のために命を捨てる覚悟で臨む13人の志士たち。なんと気高き男たちよ。彼らの民を思う心、忠義を貫く心、命を賭して散っていく潔さ……。すべてが美しい。ただ、勧善懲悪の娯楽作としては上出来だが、島田以外の12人の素顔がいま一つ見えてこなかったのは残念。とはいえそれによって、島田がいかに優れた人物だったかが浮き彫りになるのだが。

 ともかく、島田役の役所さんをはじめとする13人の刺客たちの好演が光る。また、斉韶を演じたSMAPの稲垣さんも、しれっとした顔で暴虐の限りを尽くすが、これがなかなか様になっており、悪役だが今作で最も印象に残るキャラクターだった。25日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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