よしながふみさんが隔月刊誌「メロディ」(白泉社)で連載し、09年の手塚治虫文化賞を受賞した人気マンガを、「嵐」の二宮和也さんと柴咲コウさんを主演に迎え、映画「木更津キャッツアイ」シリーズの金子文紀監督が実写映画化した「大奥」が1日、公開された。男女の立場が逆転した江戸城の大奥を舞台に、そこで繰り広げられる人間たちの思惑や駆け引きを描く。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
時は徳川七代将軍家継の世。江戸は、男子だけがかかる疫病が流行し、多くの男たちが命を落としていた。男女の立場は逆転し、それは、大奥も例外ではなかった。困窮した実家を救うために大奥に入ることを決意した、二宮さん演じる水野祐之進。やがて彼は、将軍の寵愛(ちょうあい)を求めて、3000人の男たちが激烈な争いを繰り広げる姿を目の当たりにする……。
大奥を扱った映画やドラマはこれまでにもあったが、そのいずれもが、女の策謀渦巻く、色と欲のドロドロした世界を描いていた。今回はそれを男たちが演じる。女性以上とはいわないまでも、同じようなドロドロ感を二宮さんをはじめとするさわやか系の男優たちに出せるのかと懸念したが、案の定、おぞましい描写はなく、その点では物足りなさは残った。だが子供の鑑賞にも堪え得る内容であることを考慮すれば妥当な仕上がりだ。二宮さんのファンには、十分やけるシーンがあるのでお楽しみに。
二宮さんは、初の時代劇となる今作で、殺陣や時代劇特有の所作を習得し、きっぷがいい侍を熱演。一方、徳川吉宗を演じた柴咲さんは、凛(りん)としたたたずまいの中に毅然(きぜん)とした態度、眼光の鋭さがキリリとカッコよく、8代将軍にピッタリだ。
金子監督は「形は時代劇だが心は現代劇のつもりで撮った」というように、衣装や美術には日本の様式が組み込まれ、ジャンルとしては時代劇に分類されるが、仕上がった作品そのものは現代劇のにおいがする。それは、大奥を構成する俳優たちの中に、中村蒼さんや、アイドルグループ「関ジャニ∞」の大倉忠義さんなど、いま勢いのある若手俳優たちが入り込み、すがすがしい風を送り込んでいるからだろう。ほかに、堀北真希さん、玉木宏さん、阿部サダヲさん、佐々木蔵之介さんらが出演。個人的には、阿部さんの“笑い”を封印した演技に好感を持った。1日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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