1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「コミックフラッパー」(毎月5日発売、メディアファクトリー)などで連載、不思議な物であふれかえる部屋に住む青年と、そこに通う女性会社員の交流を描いた秋★枝さんのラブコメディー「煩悩寺」(620円)です。
ウナギノボリ
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5年付き合った彼と別れた小沢さんはある日、同じマンションに住む男性・小山田の部屋のトイレを借りた。我に返って気付くと、その部屋はセンスもなく、意味不明なものばかりが置かれていた。小山田の兄から送られるモノであふれかえる部屋の名は「煩悩寺」。なぜか癒やされる小沢さんは、暇を見つけては通うようになるが、2人の関係はどんどん近付いていき……というストーリーだ。
ピュアで初心(うぶ)な大人の恋愛マンガに定評(?)のある秋★枝さんの最新作です。
元々この作品はちょっと変わったモノがあふれる部屋「煩悩寺」に、夜な夜な集う人たちが部屋にあるもので遊ぶというコメディーで始まりました。
しかし登場人物が主人公の小山田くんと小沢さんの男女2人(たまにプラス1)だけなので、当然というか、まあ、しかるべくお互いが意識しだすわけです。その、とても見ていられないような、初々しい片思いっぷりが、秋★枝マンガの見どころだったりします。
そして1巻のラストは、ついに小山田くんの告白にいたるのですが、隔月連載の1話読み切りショートにもかかわらず、このエピソードだけで3話(ってことは半年ですね)にわたって引っ張るという暴挙に出た秋★枝さん。しかし、そこはさすが恋愛マスター(笑い)。この告白シーンでは、恥ずかしさのあまり身もだえる読者が続出でした。未見の方はぜひその目でご覧ください。
社会人女性としてのリアリティーを持ちながら、無邪気でスキのあるところがキュートな小沢さん。そんな彼女との優しい恋のドラマが静かに心をとらえる作品です。一緒にお酒飲んで他愛もない話で盛り上がったり、変なおもちゃ見つけて遊んだり、マージャンをしたり。熱烈さや過激さはなくとも、友達同士の付き合いから始まるなごやかな恋愛関係が見ていて心地良いのです。さわやかで清くて、青春の延長線上にあるような大人の恋。いくつになっても、やっぱりこんなピュアな恋愛にあこがれるんですよ。
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