新藤兼人監督:「またやってもいい」98歳、次回作に意欲 東京国際映画祭で審査員特別賞

東京国際映画祭の審査員特別賞を受賞し、クロージングセレモニーに登場した新藤兼人監督
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東京国際映画祭の審査員特別賞を受賞し、クロージングセレモニーに登場した新藤兼人監督

 新藤兼人監督(98)の映画「一枚のハガキ」が31日、「第23回東京国際映画祭」の審査員特別賞を受賞。「これが最後の映画だと宣言して作りました」と語っていた日本最高齢監督の新藤監督は、会見で記者から「世界には102歳の監督がいるそうなので103歳なっても撮ってください」と激励され、「もう死が直前に迫っていますので、固い約束はできませんけれど、これが最後と思っていたんですが、誰か応援してくれる人がいれば、またやってもいいなと思っています」と次回作にも意欲を見せた。

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 「一枚のハガキ」は、戦争末期に100人の中年兵が召集され、くじ引きで次の戦地が決められることになり、宝塚に赴任する松山啓太(豊川悦司さん)が、フィリピンへ赴任となる森川定造(六平直政さん)の妻・友子(大竹しのぶさん)から一枚のはがきを託される。定造は自らの死を予感して、啓太が生き残ったら、はがきを読んだと妻に伝えるよう依頼する。そして終戦後、生き残ったのは啓太を含んだ6人だけだった。啓太は故郷に戻るが待っている者はおらず、そしてハガキを持って友子を訪ねる……という新藤監督自身の戦争体験を基に、戦争の悲惨さを描いた作品。

 新藤監督は27日の会見で、「これで最後だと宣言して、映画作りを降りるつもりです。これからはわずかだと思いますが、映画のことを思って生きて行きたい。小さな映画人の小さな映画ですけれど、みなさんどうぞよろしくお願いします」と引退を示唆していた。

 この日会見で、新藤監督は「1950年に独立プロを作って60年たちました。金策に奔走する毎日でしたが、転んでも泣かないで映画を作ってきた。泣いていては映画は作れないからです。『一枚のハガキ』は最後だからいいたいことを言うような気持ちで映画を作った。皆さん一生懸命映画を作っているから、みんないい映画で、運がよくて特別賞をいただいた。これで勇気を得て、またやったらという人がいますが、もうだめ」と言うと、記者から「まだやれます。頑張って。まだ運があります」と再び励まされ、「励ましてもらえる人がいなきゃやれない。映画監督は面白いけれど非常にきつい仕事。でも映画作りは魅力があるのでやってこれたんです」と答えていた。

 同作品は、南果歩さんや谷村美月さんが出演した「海炭市叙景」などともにコンペティションに参加。東京サクラグランプリはイスラエルの「僕の心の奥の文法」が受賞、ニル・ベルグマン監督は「本当に驚き、うれしい。(映画祭の)IDパスにキスしたいくらい。感激です」と喜びを爆発させた。主演のオルリ・ジルベルシャッツさんは「こういう形(映画祭に出品)で東京にいられて感激。私の時代はどの国も問題を抱えているが、芸術や映画で世界が変えられるのではないかと強く感じる」と語った。観客賞はフランス映画「サラの鍵」(ジル・パケ・ブレネール監督)だった。(毎日新聞デジタル)

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