ドキュメンタリー映画の試写で、めずらしくあちこちから笑いがもれていた。ニューヨークの現代アートのコレクターである老夫婦を、日本人女性監督が追った映画「ハーブ&ドロシー」(佐々木芽生監督・製作)が13日から全国で順次公開されている。ニューヨークで17週のロングラン上映された話題作。米国各地の映画祭で賞を多数受賞した。夫婦愛、アートへの愛……いろんな愛が詰まっている。
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夫のハーブは郵便局員、妻のドロシーは図書館司書として働きながら、30年かけてコツコツとアート作品を集めてきた。気に入った作品でも、お給料の範囲で買えて1LDKの狭いわが家に入ることが条件だ。自宅の壁に洗面所に床に、無造作に飾られているアート作品。それらはいつしか、20世紀のアート史にとって重要なコレクションとなっていた。そして夫婦の元に、米国の国立美術館から寄贈依頼が舞い込む……。
アートのコレクターといっても、ハーブとドロシーは大金持ちではない。失礼ながら、どこからどう見ても庶民だ。小さな夫婦の大きなコレクションというあたりが、作品をキュートなものにしている。最初は夫婦で絵を習い、そのうちにギャラリーに通ってアート作品を買い始めたという。その時期が、ニューヨークの現代アートが花開く時期と見事に重なった。映画はこの老夫婦の歩みから、現代アートの歴史をのぞかせ、作家たちへのインタビューなども重ねてつづられていく。
作品を見つめる2人は本当に幸せそうにほほ笑み合っている。見ているこちらも、温かい気持ちになってくる。どこに行くにも手をつなぎ、仲良く歩く姿がほほ笑ましい。二人三脚の夫婦の歴史は、「ゲゲゲの女房」の水木しげる夫妻さながらである(そういえば、何かに見入るときのハーブの目つきは水木先生っぽい)。子どものいない夫婦にとって、コレクションはわが子同然だったのだろう。アーティストと交流する姿は、彼らの成長を見守る親のようで、深いきずなが見てとれる。夫婦の姿から、人生を豊かに過ごすためのヒントが得られるだろう。13日からシアターイメージフォーラム(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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