乙葉しおりの朗読倶楽部:第14回 芥川龍之介「トロッコ」 わずか一晩で書き上げた一作

「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん
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「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第14回は、芥川龍之介の「トロッコ」だ。

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 みなさんこんにちは、乙葉しおりです。

 東日本一帯を襲った大きな災害……被災された方には心からお見舞い申し上げます。

 今の気持ちをうまく言葉にできなくて、ずっと考えています。

 どうしたらみなさんの力になれるのか。

 私には本を読むことくらいしかできませんが、今、できることで協力していきたいと思います。

 それで少しでもみなさんに元気を持ってもらえたら……そう思って、読み続けます。

 被災地が一日も早く復興されることを、心から願って。

 また笑顔で皆さんにお会いできる日を願っています。

 さて、今日は朗読倶楽部のみんなでカラオケのお店に行ってきました。

 と、いっても歌うために行ったわけではなくて、朗読の練習が目的なんです。

 朗読倶楽部の部室は、図書館内の先生の控え室を間借りさせていただいているので、あまり大きな声を出して練習することはできません。

 部として認められていなかったころは、校内の練習場所もなかなか確保できなかったため、みんなで校外に足を伸ばして、探し当てた練習場所の一つなんです。

 今は正式な部活動になって、校内の練習場所も確保しやすくなりましたけど、それでも他の部活動の方たちと分け合って使っているので、場所が取れないときには外に出ています。

 それに、施設にある録音機材を使って自分の発声をチェックすることもできますし、知らない人に練習を見られてしまうこともないので、あがらずに練習できるのも私としては助かっています。

 ただ、本当にあがり性を治したいのなら、もっと人前で練習しないとダメだってみんなには言われるんですけど……。

 ではここで、朗読倶楽部のメンバー紹介のお話に移りますね。

 朗読倶楽部メンバーご紹介の最後は、朗読倶楽部顧問、癸生川新(きぶかわ・あらた)先生のお話をさせていただきます。

 先生は学校図書館の司書をされているんですが、以前お話しした通り、部室を提供していただいたばかりか、部長さんこと丙絵ゆいさんを紹介してくださったうえに顧問にも……これはちょっと強引でしたが……なっていただいて、朗読倶楽部の下地を作ってくださいました(*^^*)

 いつも不機嫌そうな顔をしていて、少し男性的な言葉遣いをされるので、初めて会った人は大抵「怖い人」という印象を持ってしまうんですけど、そんなことはないんですよ。

 実は、私が先生とお会いしたのは朗読倶楽部結成のときが初めてではなく、高校入学前にも一度お会いしているんです。

 以前お話した、入学試験で私の自転車のチェーンが切れてしまったときのこと。

 あのとき助けてくださった方が、先生だったんです。

 もしあのままだったら今の高校にいられなかったくらいの恩人なのに、朗読倶楽部の顧問になってくださるまで思い出せなかった自分が、恥ずかしいです……。

 ……と、そんなわけですから、いつも顔をしかめているんですけれど、本当はとっても優しい先生なんですよ……と言うと、なぜか怒るんですけど……(>_<)

 朗読倶楽部顧問、癸生川先生のご紹介はまだ続きますので、次回もまたよろしくお願いしますね(^−^)

■しおりの本の小道 芥川龍之介「トロッコ」

 こんにちは、14回目の今回ご紹介する一冊は、芥川龍之介さんの「トロッコ」です。

 1922年に発表された短編小説で、2010年には本作を基に現代の台湾を舞台に設定した映画も製作されました。

 8歳の少年、良平が住む街の近所では、鉄道の敷設工事が行われていました。

 土砂運搬に使われるトロッコが坂道を滑り落ちてくる様子を見て、良平は「トロッコに乗りたい」と思うようになります。

 ある日、トロッコと2人の若い作業員を見かけた良平は、2人に申し出てトロッコを押す手伝いを始めました。

 坂道を転がるトロッコに乗れるなら、どこまでも押していたいと思う良平でしたが、レールの先に海が見えてきた時、街から遠く離れてしまったことに気付かされたのです……

 このお話は、慎重で筆が遅い芥川龍之介さんが、1922年2月16日のわずか一晩で書き上げたものだといわれています。

 内容も当時発表していた他の作品と比べると、異色と評価されているのですが、実はこのお話、力石平蔵さんという方が原稿用紙5~6枚にまとめた自身の幼少期の風景を、芥川龍之介さんが書き直したものなんだそうです。

 このお話の最後には、

 「良平は二十六の年、妻子と一しょに東京へ出て来た。今では或雑誌社の二階に、校正の朱筆を握っている」

 と、具体的な後日談が書かれていますが、これも力石平蔵さんの当時の状況をそのまま描いたものになっています。

 力石平蔵さんと芥川龍之介さんは、家族同然の付き合いだったそうで、この「雑誌社の校正の仕事」も、芥川龍之介さんが力石平蔵さんに紹介した仕事という書簡も残っているんですよ。

 他にも、力石平蔵さんの原案を元に芥川龍之介さんが書かれた作品に、「百合」と「一塊の土」があります。

 こちらも機会がありましたら、ご紹介させてくださいね。

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