乙葉しおりの朗読倶楽部:第13回 中島敦「山月記」 狂気の末に虎に…

「李陵・山月記」作・中島敦(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「李陵・山月記」作・中島敦(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第13回は中島敦の「山月記」だ。

ウナギノボリ

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 みなさんこんにちは、乙葉しおりです。

 暖かくなってきて、色とりどりの花が咲き始めると、外を歩くのが楽しくなりますよね。

 でも、その一方で花粉症の人にとっては憂鬱な季節ではないでしょうか?

 私は花粉症になったことはないのですが、学校でもマスクをしてつらそうにしている人を見かけます。

 花粉症の人が増えたのは、環境汚染とか、人が昔に比べて清潔になったことで、細菌などに対する免疫力が低下したとか、いろいろな説があってはっきりとした原因は明らかになっていません。

 花粉症で鼻声になってしまったら、朗読もできなくなってしまいますし大変です。

 そこで、私も花粉症にかかってしまわないように、予防法を聞いて回ってみました。

 一番確実なのはマスクをすることだと思ったんですけど、どうやらそれだけでは不充分みたいで、外を歩いた時に身体についた花粉が、家に帰った後で鼻に入ってしまうことがあるそうです。

 帰ったら服は洗濯して、できればシャワーを浴びて花粉を洗い流してしまうのがいいとか。

 さすがに外に出るたびにそれでは大変ですけど、私もちょっと気をつけてみようと思います。

 ちなみに3月7日は花粉症記念日だそうです。

 今はテレビの天気予報でもおなじみの花粉情報を、1993年の3月7日から発表し始めたことが由来になっているそうですよ。

 ではここで、朗読倶楽部の部員紹介を……前回に引き続き、部長さんこと、丙絵(ひのえ)ゆいさんのお話です。

 部長さんの押しの強さは、文芸部が朗読倶楽部になってしまったところからも想像できると思うんですけど、ほかにもこのコラムでいままでお話したボウリングに豆まきなど、朗読倶楽部でのイベントはみんな部長さんの呼びかけで始まります。

 たまに遊びすぎだと先生に怒られることもありますけど、朗読倶楽部で一番のリーダーシップを持っているのは間違いありません。

 ただ、そのリーダーシップがいき過ぎて、よく「すごい朗読のトレーニング」を提案するのが悩みの種でしょうか。

 商店街の売り子をするとか、ディベート大会に出るとか、声優のオーディションに応募するとか……しかも、こっそり準備を進めて断れなくなったところで話を持ってくるんです(>_<)

 でも、あの大変なトレーニングの日々があったからこそ、朗読倶楽部が今も無事存続できているんですし、部長さんにはとっても感謝しているんですよ。

 ……本当のことを言うと、もうちょっとおとなしくなってもらえたら、と思うこともあるんですけど(>_<)

 そんな部長さんですけど、ご両親の前ではおとなしいのです。

 厳しいご両親だからというわけではなく、理由があるのですが……それはまた、機会があったらお話しますね。

 以上、丙絵ゆいさんのご紹介でした。

 次の朗読倶楽部メンバーご紹介は、朗読倶楽部の顧問、癸生川新(きぶかわ・あらた)先生です。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(^−^)

■しおりの本の小道 中島敦「山月記」

 こんにちは、第13回の今回ご紹介する一冊は、中島敦さんの「山月記」です。

 このお話は中国に古くから伝わる、人が虎に変わってしまう「人虎」の変身譚を元に、清の時代(1644~1912年)に李景亮(りけいりょう)さんが書かれた「人虎伝」を脚色したもので、1942年に発表された中島敦さんのデビュー作になります。

 唐の時代、秀才でその名を知られ、若くして要職に着いた李徴(りちょう)という役人がいました。

 自負心の強い彼はその身分に満足せず、詩人として名を成そうとするのですが、才能の芽が出ないままに生活が苦しくなって挫折し、再び役人職に戻ることになります。

 しかし、見下していたかつての同僚や部下は、出世して彼の上司となっていました。

 命令される身分となったことにプライドをいたく傷つけられた李徴は、狂気を募らせ、ある日の夜、闇の中へと姿を消してしまいます。

 翌年、李徴の役人時代の友人である袁(えん)サンが同じ場所を通りかかると、最近うわさになっているという人食い虎が襲い掛かってきました。

 ところが、そのまま彼にかじりつくと思われた虎はその身を翻し、驚くことに「危ないところだった」と、人間の言葉をつぶやいたのです。

 「その声は、我が友、李徴子ではないか?」

 袁サンの問いに、虎は答えました。

 「如何(いか)にも自分は隴西(ろうさい)の李徴である」と……。

 人虎伝と山月記の最大の違いは、李徴が虎になってしまった理由です。

 人虎伝では、李徴が人を殺してしまったことに対する報いとして虎になってしまいますが、山月記では、心の病を悪化させて狂気に走った結果、虎になったと、作中で李徴が詠む詩でも表現されています。

 因果応報で分かりやすい人虎伝に対して、山月記はより現代的な問題を扱っていると言えるのかもしれませんね。

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