10年の仏カンヌ国際映画祭で、タイ映画では初めてパルムドール(最高賞)に輝いた「ブンミおじさんの森」(アピチャッポン・ウィーラセタクン監督)が公開中だ。審査委員長を務めたティム・バートン監督は「この映画には、私が見たこともないファンタジーがあった。僕たちはいつも映画にサプライズを求めている。この映画は、まさにそのサプライズをもたらした」と絶賛。「アリス・イン・ワンダーランド」など、常に想像力に豊かな作品を送り出すバートン監督がそう言うのだから、その独創性やイマジネーションは折り紙つきだ。
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腎臓病を患い余命わずかであることを悟ったブンミおじさんは、亡き妻の妹ジェンを自分の農園に呼び寄せ、あとを任せようとする。そんな彼とジェンの前に、ブンミの妻の霊や、数年前に消息を絶った息子が猿の精霊となって現れる……。
ジャングルの中に現れる黒々とした水牛。目が赤く光る猿らしき生き物。王女様の一行と水の中を泳ぎ回るナマズ……。そうした数々の光景に意表を突かれるが、ウィーラセタクン監督は、ある僧侶が書いた「前世を思い出せる男」という小冊子に触発され、このストーリーを書いたという。つまり、観客を含む生きとし生けるものすべての前世は水牛であるかもしれないし、王女であるかもしれない。あるいは虫かもしれないのだ。観客は現実とイメージ、過去と現在、生と死の境界線を軽々と飛び越えてしまうウィーラセタクン監督の感性と世界観の斬新さに、最初は戸惑うかもしれない。しかし、映像に身を委ねていると不思議と心が安らいでくる。映画という表現力の奥深さと多様性を改めて“体感”できる作品だ。シネマライズ(東京都渋谷区)ほかで全国順次公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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