あの花:切ない“青春ファンタジー”アニメが話題 ノイタミナ新作、丁寧な演出にネットで絶賛

アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の1シーン(C)ANOHANA PROJECT
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アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の1シーン(C)ANOHANA PROJECT

 フジテレビ深夜アニメ枠「ノイタミナ」(木曜深夜1時15分)で放送中の「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(あの花)」。幼なじみのきずなと成長を描いた切ない“青春ファンタジー”が話題になっている。

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 物語は、じんたん(宿海仁太)を中心に、小学生のころ仲が良かった6人の高校生たちだが、めんま(本間芽衣子)の死をきっかけに、距離が離れていた。じんたんは軽いひきこもりになり、体が小さかったぽっぽ(久川鉄道)は進学せずに旅を重ねている。ある日、じんたんの前に少女のままのめんまが「お願いをかなえてほしい」と現れる。じんたんが、めんまの「お願い」をかなえるために動き出すと、バラバラになっていた幼なじみが再び集まり……という思春期を迎えた6人のドラマが描かれる。

 人気アニメ「とある科学の超電磁砲(レールガン)」などを手掛け、ヒットメーカーとして知られる長井龍雪監督、08年に制作したヒットアニメ「とらドラ!」の脚本家の岡田麿里さん、イラストレーターの田中将賀さん。「3人でまたアニメを作ろう」と約束していた3人が、「あの花」の企画に合わせて再び集まった。

 長井監督は重視したのはドラマ性だという。幼いころ、「超平和バスターズ」と名乗って、秘密基地をつくり、楽しく遊んでいた仲間たちが、めんまの死について、それぞれが罪の意識にさいなまれながら、淡い恋心を抱くという等身大の若者像を描くことで、6人のきずなが浮き彫りにされていく。長井監督は、「3人でやることが大前提でした。岡田さんは、文字にできない感情や抽象的な部分までくんでくれる脚本家。田中さんの絵はしぐさや表情までも的確に出してくれる」と語り、「キャラクターたちのこまやかな心情を、そのままフィルムに焼き付けようと悪戦苦闘しています」と話す。

 幼いころに死んだめんまが、幽霊として姿を現すというファンタジーなのだが、壁をすり抜けるような“アニメ的”な演出はなく、鏡に映らなかったり、じんたん以外の人がその存在に気が付かないことで幽霊であることを表現している。2話では、めんまが肉を食べるシーンも描かれ、「スタッフが作ったんですが、監督(の私)が見てもびっくりですよ。でも『ありだな』と思いましたね」と笑うほどだ。

 アニメの舞台は埼玉県秩父地方がモデル。新潟出身の長井監督は、東京に近いようで数時間かかるという微妙な距離に都会へのあこがれを込め、山に囲まれた風景に若者が抱く閉塞(へいそく)感を重ねているという。また、エンディング曲も01年のガールズバンド「ZONE」の大ヒット曲「secret base~君がくれたもの~」を女性キャラ3人がカバーしている。「秘密の基地」「また会えるのを信じて」といったせつない歌詞が作品とオーバーラップしてくる。

 こうした丁寧な作品づくりが、視聴者にも通じたのか、4月の放送開始直後からインターネットでも演出を絶賛する書き込みが相次ぎ、「secret base」のカバーは、5月9日付オリコン週間シングルランキング10位にランクイン。アニメのブルーレイ・ディスクもインターネット書店「アマゾン」の予約チャートでも上位に入っている。

 長井監督は「アニメっぽい話でないので、ファンから受け入れられるか心配だった。葛藤はありましたし、今でもあります」と言いながら、6月末の最終回に向け、「物語の後半には人間関係が複雑になります。仕掛けも残していますからその演出も楽しみにしてください」と自信を見せる。「あの花」の名前が明かされるのか、注目だ。(毎日新聞デジタル)

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