マンガ質問状:「球場ラヴァーズ」 前代未聞の「応援席」マンガ きっかけは深すぎる“カープ愛”

「球場ラヴァーズ~私が野球に行く理由~」(少年画報社)3巻の表紙
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「球場ラヴァーズ~私が野球に行く理由~」(少年画報社)3巻の表紙

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、いじめを受けている女子高生がひょんなことからプロ野球「広島東洋カープ」の熱狂的ファンと出会ったことから野球の魅力に引き込まれ、自分と向き合っていくドラマを描いた石田敦子さんのマンガ「球場ラヴァーズ~私が野球に行く理由~」です。「ヤングキング&アワーズ」(少年画報社)編集部の星野さくらさんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 なによりも、プロ野球を扱うのに、選手のプレーが一切登場しないという「応援席」マンガという前代未聞のジャンルである事が最大の魅力だと思っております。主人公は、女子高生、アニメーター、女性会社員という、まったく接点のない3人。球場のビジター外野席だけで会う3人が、広島東洋カープというチームを応援することで自らと向かい合っていく……そんな物語は、カープのビジター外野席というとても限られた空間を舞台にしながら、誰かを、何かを応援するすべての人の共感を生むドラマになっていると思います。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 きっかけは、石田さんの深すぎる“広島カープ愛”だと断言できます(笑い)。広島出身の石田さんは、スコア片手にプロ野球を見るような女子高生だったと伺っています。前に連載していただいていた「アニメがお仕事!」という連載の際にも、主人公は広島カープを“ディープに”愛する女の子でした。そこで新連載を始める際に、編集部の方から、広島カープの応援席を舞台にした物語はどうでしょう?とお話をさせていただきました。

 −−プロ野球選手も出ない異色の作品です。野球ファンの反応はどうでしょう?

 「野球ファンの片隅にいさせてほしい」と石田さんは、よくおっしゃっています。私にしてみたら十分ディープなのですが、ご本人は「今はあまり詳しくないから……」と描く前も、描きながらも、この作品を描いていいのかとても気にされていたように思います。しかし単行本が発売したところ「この気持ち、すごくわかる!」と広島カープのファンの方から多くのご声援をいただき、本当にありがたかったです。また、他の球団のファンの方やサッカーのサポーターをやっているという方々からも「応援するって、そうそう、こういう気持ちなんだよ!」というご意見をいただけたのも、とてもうれしかったです。

 −−編集者として作品を担当するうえでうれしいこと、逆に大変だったエピソードを教えてください?

 大変だったエピソードといえば、昨年の交流戦で西武ドームでの試合を観戦することになったのですが、西武ドームはビジターとホームが逆になる事をしらず、間違えて西武応援席側のチケットを買ってしまうという大ミスをやらかしてしまいました……。西武の白い応援席の中で、赤いカープのユニホームの石田さん……。本当に申し訳ない気持ちで大汗をかきました。私(編集)ではなく、石田さんが大変だったエピソードでしたね、これ(笑い)。あとで、そのエピソードをそのまま“野球素人”の主人公の間違いとして使用してもらえたのがせめてもの救いです……。

 −−今後の展開、読者へ一言お願いします。

 5月から掲載誌を「ヤングキング」から毎月30日発売の「ヤングキングアワーズ」に移しての連載となりました! 基本的に1話読み切りとなっておりますので、これを機にお気軽に手に取っていただければ幸いです。

 今年のプロ野球は、さまざまな意味で注目を集めていると思います。久々の首位奪還、そして歴史的連敗……。さまざまなドラマを起こす11年の広島カープをリアルタイムに追っている“応援席マンガ”「球場ラヴァーズ」も、なにが起こるかわかりませんので、ぜひご注目いただければ!

 今年の正月は、(百貨店の)広島そごうさんで「球場ラヴァーズに登場できる権」を福袋で販売しました。購入者の方が登場した回は、3巻に収録しております。そんなビックリするような企画もありますので、ぜひ掲載誌「ヤングキングアワーズ」もチェックしていただければうれしいです。

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