注目映画紹介:「あぜ道のダンディ」 現代に生きるおじさんのもの悲しさとおかしさ

「あぜ道のダンディ」の一場面 (C)2011「あぜ道のダンディ」製作委員会
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「あぜ道のダンディ」の一場面 (C)2011「あぜ道のダンディ」製作委員会

 日本映画の名脇役、光石研さんの主演作「あぜ道のダンディ」が全国で順次公開中だ。さえないお父さんを演じ、「博多っ子純情」以来、33年ぶりの主演となった。「川の底からこんにちは」(09年)の石井裕也監督が、イケてない人を温かい視線から描き、滑稽(こっけい)さと切なさを誘う。

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 北関東の地方都市に住む宮田淳一(光石さん)は配送業に勤める50歳。妻を亡くし、浪人中の息子と高校3年の娘と3人暮らしだ。子どもたちとは会話はポツポツ。中学時代からの親友の真田(田口トモロヲさん)と飲んではぐちっている毎日。ある日、胃の調子が悪くなった宮田は、妻の症状を思い出し、胃がんかと思い悩むが、弱音をはきたくない宮田は子どもたちに打ち明けられない。そんなとき、子どもたちが東京の大学に合格。宮田は子どもたちと思い出を作ろうと思うのだが……。

 50歳。団塊でもない新人類でもないはざまの世代。出生数の棒グラフを見ても、前後に比べて谷だ。そんな世代が若いときは、今みたいに女性が世の中に出ていなかったから、虚勢を張ることもできたはずだ。宮田は虚勢を張るくせだけを残し、おじさんが、おばさんに比べて弱いことが分かり切っている現代を生きている。酒でも飲んでいなければやっていられない。宮田は「こんな大変な時代におじさんやってんだぞ!」とくだを巻く。光石さんが深刻な顔をすればするほど、おじさんのもの悲しさやおかしさが出てくる。田口さんが演じる親友の真田もさえない人物で、2人の会話がかみ合ってない感じがまた面白い。この2人のおじさんを見ていると、一生懸命さが伝わってきて、なぜだか温かい気分になってくる。18日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほか全国で順次公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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