乙葉しおりの朗読倶楽部:第27回 野村美月 “文学少女”と死にたがりの道化 物語を“食べる”少女

「“文学少女”と死にたがりの道化」作・野村美月、イラスト・竹岡美穂(ファミ通文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「“文学少女”と死にたがりの道化」作・野村美月、イラスト・竹岡美穂(ファミ通文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第27回は、野村美月の「“文学少女”と死にたがりの道化」だ。

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 気がつけば、「夏至(げし)」を過ぎましたね。

 夏至は一年中で一番昼の時間が長い日とされていて、今年は6月22日でした。

 以前、節分の話題で立春、立夏、立冬などの「季節の分け目」のことをお話ししましたが、夏至も一年を24分割した「二十四節気」のひとつになります。

 ちなみに昼がもっとも短くなるのは、二十四節気で夏至の対極に位置する「冬至(とうじ)」です。

 ゆずを入れたお風呂に入ったりして、夏至よりもご存じの方が多いのではないでしょうか(^−^)

 6月23日は「禿山(はげやま)の一夜」です。

 聖ヨハネ誕生日の6月24日前夜に、死神チェルノボグと手下の魔物や幽霊が禿山に現れて一夜だけの騒ぎをするというロシア民話なのですが、日本ではモデスト・ムソルグスキーさんが作曲した同名の交響詩が有名で、題名は分からなくても一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

 そして、6月29日は「星の王子さまの日」です。

 これは1943年に発表された児童文学「星の王子さま」の作者、サンテグジュペリさんの誕生日にちなんで設定されています。

 作家であると同時に飛行機のパイロットでもあった彼は、1935年にエジプト上空で操縦していた飛行機が故障して不時着。

 同僚とともに5日間、砂漠で生死の境をさまよった経験を「星の王子さま」に生かしたそうです。

 ではここで朗読倶楽部のお話、今回は初めて大会に出場したときのことをお話しさせてください。

 いままでにご紹介した練習方法で練習を続けてきた私たち朗読倶楽部ですが、自分が成長しているのかどうか実感する前に、ある期日が迫っていました。

 締め切りの都合から、まだ朗読の練習もまともにできないうちに応募した五つの大会。

 その最初の大会の開催が、すぐそこまで迫っていたんです。

 ちなみに大会のルールは……

 「課題図書一覧から1冊を選び、発表する壇上への入退場時間を入れて5分間でできるだけの表現を行うこと」

 課題図書が、朗読倶楽部の蔵書と重なっていたのは幸いでした。

 練習で使っていた本も課題図書の中にありましたから、少しだけスタート地点で得をしたことになります。

 そして、与えられた朗読時間が5分間ということは、長編はもちろんですが、短編でも読めない短い時間……つまり、朗読でかんでしまう失敗の恐れが、その分少なくなるということです。

 これなら設立したての倶楽部で練習量も少ない私たちでも、賞を取るまではいかなくても善戦できるかもしれない。

 そう思ってしまったのですが……もちろん、そんなに甘いものではないことを、この後思い知ることになるのです(>_<)

 ……と、いうところで、次回に続きます。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 野村美月 “文学少女”と死にたがりの道化

 こんにちは、今回ご紹介する1冊は、野村美月さんの「“文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)」です。

 “文学少女”シリーズは、06年から11年までの5年間に本編、短編集、外伝と合わせて16冊が刊行され、10年には映画化されました。

 本作は、そのシリーズ第1作になります。

 主人公の井上心葉さんは、過去のある事件から人と深くかかわることを恐れ、誰とも傷つけあうことなく平穏に暮らすことを望んでいました。

 ところが高校に進学したばかりのある日、一人の少女が本のページを食べているところを目撃してしまったために、彼女が部長を務める文芸部に強制入部させられたうえに、部室で毎日、彼女の「おやつ」を「執筆」する羽目になってしまったのです。

 普通の人間の味覚を持たず、物語が書かれた紙に味覚を感じる彼女。

 心葉さんの一年先輩にあたる彼女は、自らを“文学少女”天野遠子と名乗りました……。

 “文学少女”シリーズは毎回文学の名作をお話の中に取り込んでいて、今回ご紹介している「死にたがりの道化」では、太宰治さんの「人間失格」をキーワードとして扱っています。

 心葉さんの視点で物語が進行する合間に語られる、「謎の人物」の独白。

 「人間失格」の主人公、大庭葉蔵さんと同様に「恥の多い生涯」を送り、「他人との感覚のズレ」を感じ、「道化を見破られて」地獄の業火に包まれる思いをする「謎の人物」の正体は?

 お話が進むにつれて疑いのある人物が増えては減り、やがて明らかになるその正体と、心葉さんのトラウマとのつながりが密接に絡み合って、一気に読めてしまいます。

 私は紙を食べてみたことはありませんけど、文字を書く鉛筆の黒鉛は体によくないんじゃないのかな……と、物語の上のことながら遠子さんが心配になってしまいました。

 皆さんはマネしないように気をつけてくださいね?

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