女優の中谷美紀さん(35)が8日、東京都内で開かれた井上靖さんの恋愛小説が原作の舞台「猟銃」の制作発表に登場した。今回が初舞台となる中谷さんは、06年にオファーを受けたことを明かし、「5年たってしまいましたが、その間に人間としても俳優としてもほんの少しではありますが成長できたと思います。世界中が日本という国に注目している中、日本人として舞台に立ち、日本人が強くたくましく生きていることをお伝えできればいいなと思います」と意気込みを語った。
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「猟銃」は、1人の男の13年間にわたる不倫の恋を、妻と愛人、そして愛人の娘の3通の手紙によって浮き彫りにしたラブストーリー。中谷さんは1人で3人の女性を演じ、立場の異なる3人の女性の内に秘められた男性への思いという共通点を浮かび上がらせる。3人の女性から手紙を送られた男をダンサーのロドリーグ・プロトーさんが演じる。また、中谷さんが出演した「シルク」など映画監督として注目を集め、シルク・ドゥ・ソレイユの公演「ZED」の演出を手掛けたフランソワ・ジラールさんが演出を担当する。
中谷さんは、今回の初舞台について、「身体能力に優れ、声のトレーニングを積んで鍛錬されていないと舞台には立ってはいけないと思っていました。勇気もなく、これまで(舞台の仕事を)お断りしていました」と明かした。また、今回も断るつもりで原作を読んだところ、「日本の女性のしなやかな強さなどが描かれた原作に魅力を感じて、ついつい『ノー』というはずが、3役すべて演じたいと言ってしまいました」と告白した。
同公演はカナダ・モントリオールで初演となるが、中谷さんは「『旅の恥はかき捨て』ではないですけど、カナダの方は日本語が分からないからせりふを間違っても分からないんじゃないかなと思っていました」といたずらっぽい笑みを浮かべながらも、「欧米のお客様は大変正直で、以前、作品が意に介さなかったのかひどい言葉を口にしながら出て行かれるところを見たことがありまして、それもトラウマになってました」と明かした。
ジラールさんについて、中谷さんは「訪問販売のセールスマンになったら、ナンバーワンだと思う」と評し、集まった報道陣を笑わせた。「どんなに条件が悪くてもプラスに変えていく力があるし、説得力がすごいんです」と理由を説明。そのジラールさんは、中谷さんについて、「美紀さんには、イタリアで『シルク』の撮影で初めて会いました。仕事に集中する優秀なスタッフたちが、美紀さんの演技で涙している様子を見て、彼女の素晴らしさを感じました」と絶賛した。
舞台は、9月7~10日にカナダ・モントリオールで上演し、10月3~23日にパルコ劇場(東京都渋谷区)で日本凱旋(がいせん)公演を行う。その他、兵庫、新潟、福岡、名古屋、京都でも上演する。30日から前売り開始。(毎日新聞デジタル)