ヒロシ:哀愁自虐ネタ貫き再ブレーク? 初の主演舞台を前にも「最後かもしれない……」

舞台「バッド・アフタヌーン~独立弁護士のやむを得ぬ嘘~」初主演するヒロシさん
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舞台「バッド・アフタヌーン~独立弁護士のやむを得ぬ嘘~」初主演するヒロシさん

 哀愁のある自虐ネタで再ブレークの兆しを見せているお笑い芸人のヒロシさんが、8月13~21日に東京都港区の劇場「赤坂RED/THEATER」で開催される舞台公演「バッド・アフタヌーン~独立弁護士のやむを得ぬ嘘~」で初主演を果たす。弁護士役に挑戦するヒロシさんに、舞台にかける思いや再ブレークにかける思いなどを聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 舞台は、若き弁護士が開業した法律相談所の敷地が地上げのターゲットとなり、立ち退き、廃業の危機に陥る。回避する条件として、今日中に裁判の依頼を取りつけなければいけないのだが……というコメディー。脚本は、08年に「テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞」優秀賞を受賞した小峯裕之さんが手がけ、演出は、ヒロシさんの初舞台である06年上演の「錦鯉」でもタッグを組んだ劇団「MONO」の代表の土田英生さんが担当する。ヒロシさんのほか、演劇ユニット「*pnish*(パニッシュ)」の土屋裕一さん、平田敦子さんらも出演する。

 ヒロシさんは、今回のオファーを受けた時期について、「精神的にも落ち込んでいる時期でしたし、どうかなあって思ってたんです」と振り返りながらも、「一番最初のお芝居で演出してくれた土田さんが『大丈夫だよ』って言ってくれて。じゃあ大丈夫かなって思って」と笑顔を見せた。弁護士役については、「専門的な法律用語を覚えないといけないとか、ややこしいものだと思っていましたが、台本には全然ややこしいのがないんですね。コメディーです」と話した。

 お笑い芸人のヒロシさんにとって、コメディーである今回の舞台は演じやすかったかどうかを尋ねると「僕は特殊で、いつも1人でやってますし、すんなりという感じではなかったです。人とやらないといけないから、コメディーとはいっても僕にとってはちがうもの」と明かした。また、「すべて自分で把握してやりたい欲望が人よりも強いと思う」と自身を分析し、「お笑い始めて17年くらいたつんですけど、3人組とか1人とか2人でやったけど、結局1人がいいなって。(今回の舞台では)僕以外で6人の人と同じものを作らないといけないから、そこの苦労というか不安があります。人と一緒にやっているので迷惑をかけちゃいけないっていう……」と、普段とはちがう環境に戸惑いもあるようだ。

 「毎回舞台のときは思うんですが、公演日前までにセリフなどを体に入れないとダメなので大変」と話すヒロシさん。それでも舞台に挑戦する理由について聞くと、「人は『現世というのは修行の場』と(俳優で心霊研究家の)丹波哲郎さんもおっしゃられた通り、修行の場なんですよね。修行のためです」と笑わせながらも、「お芝居っていうのが、よくわからないんです。そこ(舞台)に何かはあるんだろうけど、僕はわかっていない。だから、(舞台を)見に行ったり参加させてもらったりして、お芝居というものを理解したいというのがありますね」と説明。

 お芝居とは何か。この解答を得るべく、ヒロシさんはドラマの撮影現場などで「何が正解で何がダメなのか」をベテラン俳優に尋ねたという。「『正解はない』って必ず言われるんです。でも、正解はあるんですよ! だって、けいこしてよくなるってことは、正解に近づけようとしてるわけじゃないですか。だから正解を習得したいんですよ」と力を込めた。舞台の見どころについて聞くと、ヒロシさんは「(共演の)松田沙紀さんは、美人ですよね(笑い)。キャストのみなさんに注目してほしいです」と話した。「ヒロシさん自身は?」と問い直すと、「『あーヒロシだ、久しぶりだ』って思ってもらえればいいです」と少し照れながら答えた。

 ヒロシさんは、4月にバラエティー番組「しゃべくり007 華麗なる春の2時間半SP」(日本テレビ系)にゲスト出演、5月に「ヒロシです。華も嵐も のり越えて−」(東邦出版)を出版、6月に「メレンゲの気持ち」(日本テレビ系)に出演など、今年になって「再ブレークか?」と活躍ぶりが注目されている。その中でも、旬の人が出演することで知られる番組「しゃべくり007」出演について、ヒロシさんは、「緊張の方が大きかったですよ。純粋に楽しむってことはないです」と振り返った。番組出演後の反響を聞くと、「反響はすごかったです。改めて『しゃべくり007』は注目されている番組なんだって思いました」と明かした。

 同番組レギュラーのお笑いコンビ「くりぃむしちゅー」の有田哲平さんについて、ヒロシさんは、「昔、有田さんによくしてもらってて。でもお笑いが嫌というシーズンに突入して、なんのあいさつもないままフェードアウトしていったので、それを悪いなって思ってました。(番組出演が決まり)どうしたもんか、気まずいなと思っていったけど、歓迎してくれてよかったです」と笑顔を見せた。

 ヒロシさんの言う“フェードアウト”の時期について尋ねると、「相当時間があるから、ネタを考えたりはしてました。その当時考えてたネタを今やってます」と明かしながらも、「釣りをやったりバンドやったり……バンドで売れようと思ってて、あまりお笑いは考えてなかったです」と意外な思いを告白。また、テレビ出演については、「テレビはつけてましたけど、あそこにいくのは無理だと思ってたし、テレビ出てどうのこうのは考えられなかった。1人でライブやったりとか、今のとことちがうとこで何かできないか、変なことばっか考えてた。貯金も減ってくるし、去年は(特に)つらかったです」と話した。

 再ブレークを果たしたお笑い芸人・有吉弘行さんについて聞くと、「会ったことないんですが、(有吉さんに)興味があって、おもしろいと思います。(有吉さんの)本とか買ってて、わかるなーってことが書かれているんです」と照れながら告白。「有吉さんがマンガ家になろうと思って画材を買いに行ったと書いてありましたが、僕も買いにいってるんですよ。『ヘタウマ』ってジャンルがあるじゃないですか。それでいけると思って4コマ(マンガ)を書いてました」と芸能界で長く活躍する難しさについて話した。

 芸能界の浮き沈みを体感したヒロシさんだが、なぜお笑いにこだわるのだろうか。「小学校のとき、転校して超いじめられっ子でした。月に一度お楽しみ会があったんですが、当時好きだった『ザ・ドリフターズ』のひげダンスをやったんですよ。そしたらすごくうけて、(まわりからの)いじられ方も変わってきて、毎月楽しみになったんですね。出し物を考えることに張り切りはじめ、日ごろから考えるようになって……」と明かした。そして1980~82年に漫才ブームの到来。「すごくかっこよく見えたんですね。そこで漫才師になりたいって」と目を輝かせた。

 最後に、ヒロシさんは「今は仕事が入ってきて今回もお芝居に出させてもらえるんですけど、本当に何カ月後かにはどうなるかわからない世界なので、これは本当に人前に出る最後になるかもしれない、そういう思いでやってます。僕のことが好きで、(ヒロシさんが)出なくなって、ブログのコメントで『最近出ねーな』とか『出てください』って書くくらいなら、今やってるときに来てください!」とアピールした。

 舞台は、「赤坂RED/THEATER」(東京都港区)で、8月13~21日に上演予定。

 <プロフィル>

 1972年生まれ、熊本県出身。「ヒロシです」の自虐ネタでブレーク。ピン芸人日本一を決める「R‐1ぐらんぷり2004」で決勝に進出するなど人気に。初舞台は06年の「錦鯉」。07年に映画「転校生 さよならあなた」に出演。テレビでは、ドラマ「タイガー&ドラゴン」(TBS系)など俳優としても活躍。今年5月にネタ本「ヒロシです。華も嵐も のり越えて−」を発売。そのほか、パンクバンド「MARMALADE」のベーシストとして定期的にライブも行っている。

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