SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』魚人島編
第1話 再出発!集う麦わらの一味!
11月3日(日)放送分
WOWOWは22日まで「堪能!最新劇場アニメ20時間スペシャル」と題し、劇場版アニメ13作品を一挙放送している。18日深夜0時からは直木賞作家・森絵都さんのベストセラー小説をアニメ化した「カラフル」(10年)を放送する。女優の宮崎あおいさん、南明奈さん、麻生久美子さんらが声優を務め、6月にフランスで開かれた第35回アヌシー国際アニメーション映画祭で長編作品特別賞と観客賞を受賞したことでも話題になった。今作を手がけた原恵一監督に聞いた。(毎日新聞デジタル)
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「カラフル」は、大きな過ちを犯して死んでしまい、天上界と下界の間でさまよう「ぼく」の魂の前に天使(?)の「プラプラ」が現れ、下界で再挑戦のチャンスが与えられる。「ぼく」の魂は、自殺した中学3年生の小林真の体に入り、真として生きることになる。真は、家庭に問題があり、成績は悪く内気で友だちもいなかったが、以前の真らしく振る舞わない「ぼく」に、周りの人間関係は変わっていく……というストーリー。
−−6月にアヌシー映画祭で特別賞と観客賞の受賞を聞いたときは?
(授賞式の)その場にいたわけなんですけれど、前もって教えてもらえなかったので、もらえるかどうか分からない状態で会場にいて、名前が呼ばれて出て行ったんですけどね。アヌシー映画祭はアニメのイベントとしてけっこう有名で大きいものだといういうことは分かっていましたけど、自分にあまり縁があるものとは思っていなかったんですね。でもなんかこういう形で長編部門にエントリーされて、しかも二つも賞がもらえたのはすごくうれしかったですね。
−−この原作をアニメ化してほしいという依頼を受け、そこで初めて原作を読んだとお聞きしましたが、読んだとき率直にどう思われましたか?
(劇場版アニメを)やってみたいと思ったんですよ、すぐにね。普通に考えるとアニメの長編向きの企画ではないのかもしれないんですよね。扱っている題材だったり、舞台だったりが、どちらかというと実写向けの作品なのかもしれないんですけど、それをアニメーションで僕に作らせたいという話に、僕はすごくやりがいを感じました。アニメにするに当たっては、普通だったらもっとアニメらしさのようなものを加えるような方向で考えると思うんですよ。でも今回は逆にそういう部分をさらに削って作ろうと思ったんです。で、それでよかったとは(完成して)思ってるわけですけどね。
でもその分、大変でしたね。というのは、自分の中の葛藤みたいなものがやっぱりあったわけですよ。やっぱりアニメを作っているんだからアニメが得意なものを入れた方がそれはもちろん有利だというのはもちろん分かっているんですけど、あえてそれをやらずにアニメが苦手なものばっかりをいつも以上にじっくりやろうと思っていたわけですから。それで本当にいいのかという自分の中での葛藤というのはずっとあったんですよね。作っている間はものすごく不安にはなるんですよ。そこで、監督って何となく安心感のあることをしたくなっちゃうんですよ。このへんでお客さんを喜ばせた方がいいんじゃないかとか、それだけじゃなくて現場的な配慮をするようになっちゃうんですけれど。そういう意味で現場が喜ぶようなことはほとんど提供しないし、どう見ても日常的な芝居ばっかりだし、アニメで描くのはものすごく大変な食事のシーンがやたら多いし、でもずっと不安は抱えてましたけど、そこはなんとか耐えてね。
−−冒頭の天上世界のシーンは古い駅のような形にされているという、そのへんも監督がおっしゃるアニメらしくないシーン、葛藤のようなものがあったのでしょうか。
うん、それもあったのかもしれないんですけど、あの導入部をああいう場所にしたというのはなんとなく最初に浮かんだことだったんですね。夜の駅は死後の世界を描くということで発想としてはそんなに奇抜ではないと思うんですけど。でも、どういう場面にしようかなとまず考えたところで、昔の夜の駅みたいな感じがいいなと思いついて、それでああいう形にしたんですよ。昔の駅って暗かったなという記憶があるんですよ。子どものころに親と親せきの家とかに行って、夜帰るときに駅で待っていると、駅の売店でマンガ本を買ってもらうのが楽しみだったんですよ。週刊の少年マンガ誌をね。買ってもらうとすぐに読みたくてしょうがなくて、読み始めるんだけど、すごく暗くて読みにくい。それで親が「こんなところで読むな、目が悪くなるから」って。親が怒るからって、ここに読みたくてしょうがないのに今読めないっていう、それで記憶にすごく残っているんですよね。なんでこんなに暗いんだろうって。
−−プラプラのキャラクターがすごく特徴的です。子どもでしかも関西弁で。そのへんの発想はどこから?
そうですね。原作とあまり変えてないといっても、プラプラにかんしては結構な変更をしているんですよね。原作だと大人なんだけど。「カラフル」の前に作った「カッパのくぅと夏休み」という作品で、僕は初めて子役と仕事をしたんですよ。子どもの持っている未完成ながらも大人ではまねできない、その短い時期にしか出せない声とか雰囲気の面白さがいいなあと思ったんですよ。そこで今回、「カラフル」でもまた子どもを使いたいなと思って。で、主人公たちの中学生たちも近い年齢(の人)でやろうと思ったんですけど、もっと小さい子どもも入れたいなと思ったときに、じゃあプラプラを年齢不詳で、原作では見た目は大人だったけど、人間じゃない存在だったから、じゃあ見た目は子どもで中身は何歳か分からない、そのギャップを持たせると面白いんじゃないかなと思ったんですよ。で、誰にやってもらおうか、オーディションで選ぼうかと思ったときに、テレビで偶然、声をやったまいけるくんっていうタレントの存在を知って、彼に決まっていく過程で、彼の持ち味がネーティブな大阪弁をしゃべる子だったので、それを生かしたいなと、それでイントネーションはすべて大阪弁にしたんですよ。
−−宮崎あおいさんが声を担当した唱子は少しキョドっている(挙動不審)というか、そのへんの味付けというのは?
あの動きはなんとなくイメージがあったんですよね。相手の目を見ないで話す。同じことを何度も繰り返すしゃべり方というのは何となくイメージがあったので。それを宮崎さんがうまいこと再現してくれた。
−−一番の山場は家族で鍋を囲んで、真が泣きながら告白するという、そこは原作ではそんなに詳しく描かれていませんでしたが、あそこを山場に持って行こうというのはどういう意図だったんですか。
僕が原作を読んだとき、どこが一番山かなと思ったときにあのシーンかなと思ったんですよ。あそこに向けて山場を作るような作り方でアニメを作って行こうと思ったんですよね。だからやっぱり食事のシーンとかも必要以上に(それまでにも)描いているわけですけれども。つらい場だった食卓が最後にそこが本来の温かい場所になるという。本来、そうあるべきじゃないですか、家族の食卓っていうのは。
−−真の友だち、早乙女君のキャラクターも原作ではあそこまで特徴的に描かれていなかったと思います。あれはどういう意図で?
そこはやっぱり早乙女君がすごく重要だぞと思っていたんで。家族が何をやってももう彼は何も心を開かないし、聞く耳を持たないような状態にあって、彼は多少なりとも人らしく接してくる、普通の中学生らしさを取り戻させる重要なキャラクターだと思っていたので、早乙女君は注意深く描いた感じです。圧倒的にいいやつにしないといけない。見た目もやっぱり気を使ったし、あの顔のイメージというのは最初からあったんですよね。あとは声をやってくれた入江甚儀君という高校生の俳優さんが、すごく合っていたなあと思って。(早乙女君は監督に似てらっしゃるのでは?)僕はそんなに素晴らしい人ではありません。
−−監督はどういう中学生だったんですか。
僕はおとなしかったですね、すごく。わりと内向的でしたけど、でも昔はいじめとかなかったので、それなりに楽しく過ごしていました。興味がどんどん広がり出す世代じゃないですか、中学時代のころって。今思い出してもそうなんですけど、そのころに出合ったものとかが、いまだに自分の中で一番大切なものだと思うんですよ。好きな音楽だったり映画だったり、結局それはずっと変わってないなと。音楽でいったらビートルズだし、映画でいったらアメリカン・ニューシネマだったり。自分の中のベースになってる。それを中学生の子にも伝えたいですよね。中学のころに興味を持ったことっていうのが、そのあとに何十年間も自分の進む道を決めていくことになったりすることがあるということを。
−−登場人物の同世代の心に響く話ですが、どこか懐かしくその上の世代にも響く映画になっていると思います。監督からそれぞれの世代にメッセージをお願いします。
やっぱり10代の子たちにはどんなに嫌なことやつらいことがあってもそれはずっと続くわけではないので。絶対にその気持ちがずっと続くわけではない、きっとどこかでつらさは過去のものになるという、それをやっぱり意識してほしいと思うんですよね。それができずに真は死んでしまったわけで、それは死を選ばなくてもいいはずだったということは、大人がやっぱり言ってあげないといけないなと思うわけで。10代の子ってまだ世界が狭いので、でもこれは10代の子に向けてというだけじゃなくて、全世代に向けて同じようなことですけどね。「カラフル」という原作がそれなりの世代に読み継がれている作品で、そこからも分かるように普遍的なお話だと思うんですよ。時間がたったら読まれなくなる作品かといったらたぶんそうではなくて、これからも読まれていく作品だと思う。人生において大切なことがすごく描かれている作品だと思うので、アニメ化をするにあたってはそういう普遍的な作品になればいいなあと思って作った作品です。
1959年7月24日、群馬県出身。シンエイ動画で「ドラえもん」「エスパー魔美」「クレヨンしんちゃん」などのテレビアニメの制作にかかわり、97年に劇場版「クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡」で監督を務める。01年の劇場版アニメ「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」が話題となり、翌02年の「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」や07年の「河童のクゥと夏休み」は各方面で絶賛され、数々の賞を受賞した。07年にフリーとなり、サンライズからの依頼で「カラフル」を手がける。
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