ベストセラー作家の浅田次郎さん自身が映像化を熱望したという長編小説を、映画「出口のない海」(06年)、「夕凪の街、桜の国」(07年)を手がけた佐々部清監督が映画化した「日輪の遺産」が全国で公開中だ。戦争を題材にした作品が多い佐々部監督だけに、さすがに力強く深い映画に仕上がっている。
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1945年8月10日。庄造(中村獅童さん)は真柴少佐(堺雅人さん)と小泉中尉(福士誠治さん)とともに陸軍大臣から命令を受けた。敗戦を悟った軍上層部が祖国復興の軍資金として、マッカーサーの財宝を秘密裏に隠匿することになったのだ。財宝は弾薬箱に入れられ、南武鉄道の駅に降ろされた。その箱を運ぶ特別任務に就いた森脇女学校の女学生20人と野口先生(ユースケ・サンタマリアさん)は、秘密兵器が入っていると思いながら喜々として箱を運ぶ。明るくけなげに働く女学生たち。しかし14日には「ポツダム宣言受諾、日本無条件降伏、戦争終ル」と書かれたビラがまかれて……。
この映画は、少女たちの笑顔が輝いていればいるほど胸が痛くなるだろうと予想はついていた。子役のころから出ている森迫永依さん(「ちびまる子ちゃん」の実写版ドラマに出演)らが、当時の少女たちになりきり、昭和っぽい無邪気な表情を見せる場面に心を打たれた。戦時中の有名な人物ではなく無名の人たちにスポットを当てているからこそ、この作品は人物描写が生々しく、過去の出来事を生き生きと見せることに成功している。上官の命令と人としての道徳観のはざまで葛藤する軍人の姿。……余談だが、福士さんは軍服がよく似合う。
親子で見てもらいたい素晴らしい映画なのに、夏休みも終わるころの公開というのが少々残念。少女たちが必死で守ろうとしたものは何だったのか。原作の余韻を見事に映像で表している。角川映画配給で27日から全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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