注目映画紹介:「極道めし」 獄中で語られる人生で一番うまかった食い物の話

「極道めし」の一場面 (C)2011「極道めし」製作委員会 (C)土山しげる/双葉社
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「極道めし」の一場面 (C)2011「極道めし」製作委員会 (C)土山しげる/双葉社

 人気グルメマンガを実写映画化した「極道めし」が公開された。監督、共同脚本は「ブタがいた教室」(08年)が話題になった前田哲さん。もう1人の脚本家は、「パッチギ!」(04年)や「フラガール」」(06年)などで知られる羽原大介さんだ。

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 とある刑務所の204房で、年末が近くなると行われる恒例の「おせち料理争奪戦」。それは、「人生で一番うまかった食い物の話」を各人が語り、他の者たちにつばを飲み込ませたら1点、その合計点が高い者が勝ちとなり、仲間からお正月のおせち料理を1品ずつちょうだいできるというゲームだった。最初はゲームに加わろうとしなかった新入りのチンピラ栗原健太だったが、ほかの4人の語りに思わず反応してしまったことで、ついに彼も自慢の料理を語り始める……。

 それぞれが思い出に残る食べ物を語ることで、その人間の生い立ちが明らかにされていく。そこには笑いがあり、ときにホロりとさせられるヒューマンドラマとして仕上がっている。だが原作は男性向けのマンガ。おそらくそれを意識したのだろう、ワイルドな演出になっており、「南極料理人」(沖田修一監督)や「かもめ食堂」(荻上直子監督)、はたまた「刑務所の中」(崔洋一監督)に出てきたような、上品で、美しく、食欲のそそる料理と食べ方を期待するとはぐらかされる。出演者にしても、健太役の永岡佑さんをはじめ、麿赤兒さん、勝村政信さん、落合モトキさん、ぎたろーさん(コンドルズ)らは演技達者で個性的だが、必ずしも女性受けする役者さんたちではない。健太の恋人役の木村文乃さんはチャーミングだし、男たちの食べっぷりはいいしで、男性客からのウケはいいはずだ。一方で、この手の話にありがちな終わり方ではない、甘酸っぱい幕切れは、男女問わず支持されるだろう。23日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開中。(毎日新聞デジタル)

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