装甲騎兵ボトムズ:一挙放送に「アニメ青春期のうねり感じて」 高橋良輔監督インタビュー

「装甲騎兵ボトムズ」の主な作品を手がけた高橋良輔監督
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「装甲騎兵ボトムズ」の主な作品を手がけた高橋良輔監督

 83年のテレビシリーズ開始以来、OVA、劇場版を含め長年にわたって人気を博してきたリアルロボットアニメの最高傑作と言われる「装甲騎兵ボトムズ」の全作品が、23日からWOWOWで放送される。独特な世界観やロボットたちのバトルシーンが特徴的な作品で、主なシリーズを手がけた高橋良輔監督に話を聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 ボトムズは、アストラギウス銀河で繰り広げられる「百年戦争」の末期、人型ロボット兵器「AT(アーマード・トルーパー)」を操る兵士のキリコ・キュービィーが成長する中で、自分の出生の謎を探り明かしていく過程が物語の軸となる。迫力あるロボット同士のバトルシーンに加え、SFサスペンス、冒険活劇、ラブストーリーとしても楽しめる奥深さが魅力の作品だ。

 WOWOWでは今回、作品世界の時系列順に並び替えて放送。テレビシリーズ以前の物語である「レッドショルダードキュメント 野望のルーツ」(88年、OVA)から、テレビシリーズの32年後が舞台の「幻影編」(10年、OVA)まで、また、キリコが主人公でない“新世代”の「ボトムズ」の最新作で、テレビ初放送となる「Case;IRVINE」「ボトムズファインダー」(11年、OVA)も放送する。

 長年の間、「ボトムズ」が多くの人に支持されてきた理由を高橋監督に聞くと、「あえて言えば、スタッフの変動が少ないということじゃないかな。安心感があって見られると思う」と分析。「30年近く作れるとは思ってなかったので、すごくうれしい」と笑顔を見せた。ただ、こんなに続くとは思ってなく、最初はテレビシリーズ52話で終了させる予定だっと言い、「52話終わった後からの物語は、プロデューサーとかの要望が来てから考えました。僕の中では52話で終わったので。あの終わり方は身近なところで賛否ありましたけど」と苦笑いを浮かべながら答えた。

 テレビシリーズではさまざまな場所が舞台になっているが、「あの当時の作り手は、(映画)『ブレードランナー』(リドリー・スコット監督/82年公開)に影響を受けたと思う。だから、ウドの街はあれに支配されてましたよ。それとは別に、現実世界の中ではベトナム戦争。クメン編はやっぱり(影響された)。僕はどちらかといったらクメン編の方が思い入れがありますかね」と、「ボトムズ」に影響された作品や出来事を振り返った。

 今回の放送では、高橋監督の手を離れた“新世代ボトムズ”「ボトムズファインダー」(重田敦司監督)と「Case;IRVINE」(五十嵐紫樟監督)も登場する。それらの作品には全くかかわらなかったと話す高橋さんは「どうせ新しく、試みとして何か新しいものを引き出すんなら、自由に作ってもらった方がいい」と“次世代”の監督に全て託したという。

 「重田さんの作品(ボトムズファインダー)は、僕が持っているものに対する、プラスアルファが見えた感じが良かった。五十嵐さん(Case;IRVINE)は「ボトムズ」の世界観の中に違う角度を入れてくれたんじゃないかな。ボトムズ52本の中では、バトルをしながら旅をするという要素をいれてたんですが、テレビシリーズではバトルというより、キリコの方に物語(の重心が)がいってて、五十嵐さんの方はバトルの方を膨らましてくれた。アクションと物語、二つ特徴が出たんじゃないかな」と新しい監督で描かれた「ボトムズ」について評価した。

 最後に、これを機会に「ボトムズ」シリーズを触れる人に向け、高橋監督は「今、アニメーションを見るとすごく良くできていて、日本のアニメは成熟期に入っている。ガンダムやボトムズはああいった分野の中では青春期だったと思う。クオリティーが問われない時代、ひとつの心意気とかで(アニメを)出した時期で、作り手の物語への思いとか、自分はこんなことを言ってみたいんだとかが、あの時代の作品にはいっぱい入っている。アニメの方向性が定まらない時代をウロウロしていた“うねり”を感じていただければと思います」と見どころをアピールした。

 WOWOWでは、「装甲騎兵ボトムズ 最新作登場記念15時間スペシャル」と題し、23日深夜からシリーズを一挙放送する。

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