ミュージシャンや作家、映画監督などマルチに活躍する辻仁成さんを中心に80年代に活動し、91年に解散したロックバンド「ECHOES(エコーズ)」が9月4日、東日本大震災の被災地・福島県のライブハウス「C−moon」でライブを行い、突如、再始動した。さらに、12月22日に「ECHOES 連帯の日 TOKYO 2011」と題してSHIBUYA−AX(東京都渋谷区)でライブを行うことも発表し、20年ぶりに本格的に活動を再開する。メンバーの辻さんと伊藤浩樹さんに、再始動の理由とライブへの意気込みを聞いた。(毎日新聞デジタル)
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エコーズは、ボーカルとギターの辻さん、ギターの伊藤さん、ベースの伊黒俊彦さん、ドラムの今川勉さんによって81年に結成。85年、アルバム「WELCOME TO THE LOST CHILD CLUB」でデビューし、9枚のオリジナルアルバムを残したが、91年に解散する。00年に辻さんが脚本を手がけたテレビドラマ「愛をください」(フジテレビ系)の主題歌に、バンドの代表曲「ZOO」が使用され、再び注目を集める。00年12月には、日本武道館(東京都千代田区)で一夜限りの再結成ライブを行うが、アンコール以外では伊黒さんと今川さんは不参加だったため、今回、20年ぶりのオリジナルメンバーでの本格的な復活となった。
再始動の構想は、福島県に住むファンからフランス在住の辻さんに向けてツイッターのメッセージが飛び込んだところからスタートしたという。辻さんは「僕は、ツイッターで47都道府県の47人をフォローしていて、地震がどうなっているか、ツイッターで情報を見ていた。その中で『エコーズをやってくれ』という声があちこちからあったんですよ。それに、震災の後、『ZOO』がラジオやテレビで、繰り返し流れているとツイッターで知った」と話す。
当時の状況を「コンビニに行ってもフランス人から『福島どうなんだ?』と言われる。テレビでは、津波の映像が朝から流れていて、子どもがノイローゼになるくらいだった」と振り返り、「そんな中、福島でライブをやろう!となり、6月に(伊藤)浩樹に連絡した」と動き出したという。伊藤さんは「僕は二つ返事でしたね。すぐに、福島のライブハウスに『その日は空いていますか? 会場費はいくらですか?』と聞いた。新鮮でしたよ。また、スタートするんだな……と自分の中と再確認できた」と事務所やレコード会社の手を借りず、自ら行動を始めた。
作家、映画監督など幅広いフィールドで活躍している辻さんだが、エコーズとしてライブを行ったのは、ファンの声が届いたこと以外にも理由があったという。辻さんは、執筆してから世に送り出すまで時間がかかってしまう小説について「その瞬間に力は出せない。小説家として悩みましたね」と話し、一方で音楽は「その場に行って歌うことができる。たった3分間でも人の心を癒やすことができる」と説明。エコーズの楽曲が現在も支持されている理由については「当時の曲を今、聴くとラブソングの中に政治など予言的なことを歌っている。当時のバンドを知らない世代もCDを聴いて、ファンになってくれている」と分析している。
また、辻さんは「ドラムの今川君は、14年くらい前に心臓の静脈が破れて、まひが残ってしまい、昔のように(ドラムを)たたけなくなった。でも、今は、たたいているんですね。音楽家としての情熱を感じる。その姿が震災後の福島の人たちと重なった」とも話す。
辻さんは、福島でのライブ当日の様子を「ライブが始まる前に、ほとんど知られていないと思っていた『ロックンロールは歩く鏡である』という曲を流したら、観客がみんなで合唱していたんですよ。楽屋まで聞こえてきて『やばい、歌詞を間違えられない』となりましたね」と振り返る。演奏については「体力的には、昔の方が優れていたかもしれないけど、音楽的には、昔よりも力強さが増しました。びっくりでしたね。今川君が、病気を乗り越えているってことが、みんなが支え合う力になっているのかもしれない」と話す。伊藤さんも「昔の焼き直しというようりは、どうせやるからには、パワーアップしたバンドを見せられたらと思っていて、その通りになった」と力強く語る。
12月の東京でのライブについて伊藤さんは「福島ではパワーのあるところを見せられたので、さらにパワーアップしたものを見せたい。初めて見る人も『来てよかった』と思ってもらえるように模索中です」と意気込んでいる。辻さんも「福島では『やらなきゃ』という気持ちが先だった。今は、新曲を作ろうっていう気持ちもある。今、伝えたいこと、エコーズじゃなきゃできない音と言葉を伝えたい」と新たな目標に向かって動き出している。
12月22日開催の「ECHOES 連帯の日 TOKYO 2011」のチケットは、11月19日から一般販売を開始する。
<プロフィル>
辻仁成さん 東京都生まれ。81年、ロックバンド「ECHOES」を結成。85年にデビューし、91年に解散する。08年には、伊藤さん、恩田快人さん(元「ジュディ・アンド・マリー」)、五十嵐公太さん(「元ジュディ・アンド・マリー」)と、新バンド「ZAMZA」を結成。作家としては89年、初の小説「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞、97年に「海峡の光」で第116回芥川龍之介賞を受賞する。映画「Paris Tokyo Paysage」「ACACIA」などの監督、舞台「醒めながら見る夢」の脚本、演出、音楽を手がけるなどマルチに活躍する。
伊藤浩樹さん 東京都生まれ。81~91年、ロックバンド「ECHOES」のギタリストとして活動。土橋安騎夫さんの「THE REBELS」、池田貴族さんの「HOLY NOIZ」などさまざまなバンド、ユニットで活躍する。08年に辻さんらと新バンド「ZAMZA」を結成。CM音楽やゲーム音楽を手掛けるほか、ラジオのパーソナリティーを務める。
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