女優の穂のかさん(22)が出演する舞台「往転−オウテン」が6日から上演される。前作の舞台「似非紳士(えせしんし)」に出演する際の取材では父の石橋貴明さんに舞台を見てもらうのは「怖い。自分自身が人間としても女優としても一人前になってから(仕事を)見てもらいたい」と話していた穂のかさんだったが、今回は「父に初めて舞台を見てほしいと思った」と話した。穂のかさんの心境の変化、出演する舞台のことを聞いた。(毎日新聞デジタル)
あなたにオススメ
“あの頃”のジャンプ:実写ドラマ化も話題「ウイングマン」 1983年を振り返る
舞台「往転−オウテン」はある夏の日に高速夜行バスに乗り合わせた3組の男女とその運転手を中心に、女性を軸にした四つの物語が進行する。穂のかさんは自宅の2階から飛び降り、入院することになった女性が昏睡(こんすい)状態から目覚めた同室の男性と交流を深めていく1編「いきたい」に出演。「いきたい」にはほかに浅利陽介さん、柿丸美智恵さんが出演する。そのほかの「アンチェイン・マイ・ハート」に高田聖子さんと大石継太さん、「桃」に市川実和子さんと尾上寛之さん、安藤聖さん、「往転」に峯村リエさんと仗桐安さん、複数の物語に藤川修二さん、遠藤隆太さんが出演する。脚本は「甘い丘」で09年の第64回文化庁芸術新人賞を受賞した桑原裕子さん、演出を脚本家・演出家として数多くの作品を手掛ける青木豪さんが担当する。
穂のかさんが演じるのはずっと入院している24歳の女性の役。「レズの女の子の役で、好きな相手がいるんだけれど、その気持ちが周りに分かってもらえないもどかしさを抱えていて、感情の起伏が激しくて泣きわめいちゃうような女性」という役どころだ。穂のかさんは「難しかったのが、ずっと病院のベッドの上で腕も足も固定されて体が動かせない。舞台って動いている方が安心するんだけれど、それができないのでどれだけその中で表現できるのか」と苦労を語った。
「今はけいこ場と自宅の往復だけ」といいつつも充実した表情の穂のかさん。「(けいこが始まった)最初は1人で勝手にスランプだった」と振り返る。いつか一緒に仕事をしたいと思っていた人たちに囲まれて「うれしいのと同時にプレッシャーがありました。けいこの前の日は眠れなかったり、1人で頭の中がいっぱいいっぱいで。経験が少ない分、皆さんよりできないのは当たり前というか、それでも足を引っ張っちゃいけない。そして埋もれたくない、私だって負けたくないという自分の中の思いに巻き込まれて」と混乱した。「でも、オーディションでせっかく選んでくださったんだから、私だけしかできないことを私の価値観でいいから演じられればいいのかなと思うようになりました」とスランプを脱出した。
また、共演の柿丸さんにもアドバイスをもらったという。「(演出の)青木さんからダメ出しされて自主練をしてたら柿丸さんが来てくれて。舞台で“会話”をすることが難しくて、どうしてもわざとらしく、せりふっぽくなってしまって悩んでいたら、『相手から言われたことの何に引っかかって次の言葉が出てくるのか、投げられて打つ、というようにしたら』と言われて。それが自分の中でしっくりきてそこからやりやすくなりました」と道が開けた。青木さんからの演出も「厳しいし、私だけ『クソ芝居』といわれることもあるけれど、愛を感じるし、この作品をいいものにしたいからこそ出てくる発言であるので『むかつくけれど絶対負けない』ってなりますね」と笑った。
実はオーディションで一番最初に同舞台への出演が決まったのが穂のかさんだった。その後、キャストが続々と決まっていく中で「(キャストに決まったのが)こんなふうになりたいとずっと思っていた人たちばかりだったので、『マジで?!』『ええ!』という感じの連続だった」という。けいこの後は飲みに行ったり、楽しい毎日といい「お芝居が好きというのが根本的にある人たちばかりなので、空気がいい、満たされた感じで、今の現場は幸せすぎて泣きそうになるくらい」と話し「今はこの仕事を誇りを持ってできているんだと思う。自分が行きたかった環境にたどり着けたので、今回は父に初めて舞台を見てほしいと思った」と力を込めた。
最後に舞台の見どころを「横転したバスに乗り合わせた人たちそれぞれが皆何かを抱えている。具体的な悩みや問題はそれぞれ違っても似たような経験や悩みはあって、そこが共感してもらえると思う。どの話もそれぞれ個性的でバラバラなんですが、これが一つの舞台になったらどう見えるのか、自分でも楽しみです」と笑顔で答えた。
舞台「往転−オウテン」は「シアタートラム」(東京都世田谷区)で6~20日公演。