注目映画紹介:「サラの鍵」 ユダヤ人迫害に遭った少女と米国人の記者の必死さが伝わる

「サラの鍵」の一場面 (C)2010 − Hugo Productions − Studio 37 − TF1 Droits Audiovisuel − France2 Cinema
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「サラの鍵」の一場面 (C)2010 − Hugo Productions − Studio 37 − TF1 Droits Audiovisuel − France2 Cinema

 第23回東京国際映画祭で最優秀監督賞と観客賞のダブル受賞を果たした話題作「サラの鍵」(ジル・パケ・ブレネール監督)が公開中だ。原作小説は、ノーベル平和賞の劉暁波氏が獄中で読んだことで話題を呼んだ。パリでユダヤ人迫害に遭った少女と米国人の記者の運命が重なり合う。登場人物を結ぶ糸が少しずつたぐり寄せられていくさまを、巧妙な語り口で見せていき、最後まで引きつけられる。

ウナギノボリ

 1942年、パリ。フランス警察によるユダヤ人一斉検挙(べルディブ事件)が始まり、サラ(メリュジーヌ・マヤンスさん)の家のドアが開けられた。サラはとっさに弟を納戸に隠して鍵をかけた。09年。米国人の女性記者ジュリア(クリスティン・スコット・トーマスさん)は、べルディブ事件の特集記事を担当することになった。悲劇の跡地を取材して回るジュリア。ほどなく第2子の妊娠に気づくが、45歳での妊娠に夫は渋い顔。やがてジュリアは、夫の祖父母から譲り受けたパリのアパートが、ユダヤ人迫害の地であったことに気づく。一方、1942年。サラは収容所に入れられていた……という展開。

 弟をなんとしても助けなくてはという少女サラの必死さと、真実にたどりつきたい一心で取材を突き進めるジュリアの必死さが層をなしてつづられていく中、運命のピースがパズルのように合わさっていく。見る側の「どうなっていくの?」という展開への好奇心を持続させ、満足感でいっぱいの出来。テーマは重く、劇的な展開だというのに、役者の芝居が抑え気味でバランスがいい。過去のシーンは手持ちカメラでライブ感たっぷりに、現代のシーンと撮影アプローチを変えているのも持ち味になっている。ときに真実は人を傷つける。そんな普遍の理に悩みながら乗り越えようとする記者ジュリアを「イングリッシュ・ペイシェント」のトーマスさんが熱演した。銀座テアトルシネマ(東京都中央区)、新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほかにて全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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