はじめの1巻:「雪にツバサ」 作者の5年越しの構想をマンガに 雪国を舞台にした恋物語

高橋しんさんのマンガ「雪にツバサ」(講談社)1巻の表紙
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高橋しんさんのマンガ「雪にツバサ」(講談社)1巻の表紙

 1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「ヤングマガジン」(講談社)で連載、超能力者の男子中学生・翼と話すことのできない女子高生・雪の恋を描いた高橋しんさんのマンガ「雪にツバサ」です。

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 北国の温泉街に住む翼は、殴られても蹴られても抵抗をしない気弱な中学生で、自分を卑下しながら日々を過ごしていた。ある日、翼の耳に女性の“心の声”が聞こえる。それは最近町から転校してきたという女子高生の声だった。超能力を持つ翼は、話せないといううわさの女子高生の声が聞こえたことで今回も“心の声”が聞こえるという超能力だと理解したが、普段は手を使わずにマンガを読める程度の小さな能力しかない。そして数日後、翼がゲームセンターで過ごしているとその女子高生が不良に連れ込まれ、乱暴されそうになる場面に遭遇して……という物語。

 ◇編集部からのメッセージ ヤングマガジン編集部 堀田定義さん 「構想から5年の歳月を経て形に」

 この「雪にツバサ」、作者の高橋しん先生が構想を練り始めたのは、もう5年ほど前になります。その間に、タイトルは何度も変わっています。「春の歌、冬のエスパー」「今日、この小さなチカラであなたが、」「きみを読む」「きみのうた」、そして最終的に、「雪にツバサ」というタイトルになりました。

 恋愛とはほど遠い中学生と“先輩”。2人の名前からつけられたこのタイトルは、この作品を表す、唯一無二のもののように感じています。

 はるか冷たい空で生まれ、ただ降りつもり、溶けていくしかない雪に。翼がなければ、翔(と)ぶこともなかったろう。傷つくこともなかったろう。

 小さく消えそうな雪の街で出会った、小さな2人。高橋しん先生の中で生まれ、5年の歳月を経て形になった、小さな恋のお話を、こうしてお届けできることは至上の喜びです。

 雪とツバサ、ふたりのこれからを、どうか見守ってくださいますよう。

 ◇書店員の推薦文 伊吉書院類家店 中村深雪さん 「聞こえないはずの声が聞こえる」

 なんとも衝撃的展開の連続で思わず目を背けたくなるようなつらい場面もありましたが、その分、翼と先輩の対話シーンにはホッとさせられました。空気感が美しくて聞こえないはずの声が聞こえてくるような気がします。前向きで愛らしい先輩を見ているとちっぽけな自分でも誰かのために力を発揮できるということへの希望がわいてきます。勘違いの真実がわかった時にお互いがさらに傷ついてしまうのではないかと不安もありますが、2人が必ず幸せになりますようにと願いながら、見守っていきたいです。

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