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逆転裁判:三池崇史監督に聞く(1) 法廷ゲームを映画化「映画自体がゲームの一部になれるといい」

映画 ゲーム
最新作「逆転裁判」について語った三池崇史監督

 01年の発売以来、シリーズ累計売上げ420万本を誇るカプコンの人気法廷ゲーム「逆転裁判」が実写映画化された。メガホンをとったのは「十三人の刺客」「忍たま乱太郎」「一命」など幅広い作風で知られる三池崇史監督。今作を「(ゲームの)異物ではなく、自然に生まれてきた子供の一つととらえてもらえたら」という三池監督に話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

 映画「逆転裁判」は、主人公の新米弁護士・成歩堂龍一(なるほどう・りゅういち)が、幼なじみでライバルの天才検事、御剣怜侍(みつるぎ・れいじ)の殺人容疑の弁護を引き受け、法廷でし烈なバトルを繰り広げる法廷エンターテインメント作だ。成歩堂を成宮寛貴さんが、御剣を斎藤工さんが演じるほか、成歩堂の助手で霊媒師の綾里真宵(あやさと・まよい)を桐谷美玲さんが演じる。

 「ゲームを知っている人は、音の感じも含めて、ちょっと戸惑うはずです。私たちの『逆転裁判』に何をしたの、と。一方、ゲームを知らない人は、こういうゲームなの?と首をかしげるはずです」とオープニングについて、そう話す三池監督。確かに、ゲームを知らなかった筆者は、余貴美子さんが演じる霊媒師が、死者からの声を告げる神がかり的な映像に、これは裁判劇ではなかったかとかなり戸惑った。だがそれは、三池監督には想定の範囲内の反応だったという。

 三池監督が目指したのは「ゲームを知っている人と知らない人が一緒に劇場を訪れ、観賞後、ゲームを知っている人が知らない人に、あの裏には実はこういうことがあって……と得意げに話せて、少し優位に立てる」こと。つまり「映画の中では描き切れていないことが、ゲームの中で解説されているなど、映画自体がゲームの一部になれるといい」というスタンスで今作を作ったという。

 三池監督は「逆転裁判」のゲームの魅力を、法廷劇にもかかわらず、「とんでもない悪人が出てきたりするのではなく、ボタンの掛け違えで事件が起きたり、真実を追究していくと人間の弱さが見えてきたりするところにある」と考えている。もちろん、善人と悪人を明確に色分けできれば、映画もゲームも作りやすい。「でも人間は、そう簡単に割り切れるものではないという“大人の視点”があって、それを説教くさくなく伝えているのがこのゲーム。そして、そんな映画があったらすてきですよね」と笑顔を見せる。その魅力の裏には「ゲームの原作者である巧舟(たくみ・しゅう)さんの優しさがあるからではないか」と思っている。

 巧さんは、カプコンに所属するゲームクリエーターで、ゲーム業界のカリスマとして知られる。その巧さんほか原作ゲームのスタッフと、監督は映画の撮影前に1度だけ会った。しかしそのときは「『逆転裁判』とはなんでしょう、あれはどういう意味なんですかとは聞かなかった。それは作品を見てこちらが感じ取ること。たとえそれが正解でなくても、こちらの愛情がホンモノであれば、(どう理解し、料理しようと)いいのです」。同じモノ作りの立場にある三池監督なりの、原作者へのリスペクトの仕方だ。

 では、完成した映画を巧さんはどう見たのか。試写のとき、三池監督の前方に座った巧さんに観賞後、三池監督はあえて感想を求めなかった。なぜなら「日本人は、だいたいよかったですよというので、あまり信用できない」からだ。だが、三池監督いわく「上映中の後頭部はうそをつけない」。巧さんの後頭部は「結構(興奮で)揺れていました。それに笑顔がよかった。僕らは職業柄、いろんな国のいろんな関係者の観賞後の笑顔を見るわけですよ。その経験値からすると、すごくいいお客さんでした」と仕上がりに自信を見せる。ちなみに巧さんは、今作にワンカット出演している。撮影時、エキストラの中にはゲームファンもいたが、「巧さんに気づいた彼らの騒ぎは、それはすごかった」らしい。

 今作には、「異議あり!」などの決めぜりふがある。「あれを実写で表現すると、音の響きでしかなくなる。完全にゲームの感触にするためには漢字を見せないといけない。いまどきのテレビのようにテロップで流すという方法もありますが、映画的にはいい方法ではない」。その問題をどうクリアしたか。それは映画を見ていただくとして、「原作をリスペクトしつつ、でも、リスペクトしたからといってこびるのではなく、こちらもいたずらを仕掛けるというか……。お客さんには、ゲームとは別の刺激を味わってもらいたいですね」とメッセージを送る。すでにオープニングからその刺激が味わえる映画「逆転裁判」は11日から全国で公開される。

 <プロフィール>

 1960年大阪府出身。横浜放送映画専門学院を卒業後、今村昌平監督や恩地日出夫監督に師事。91年監督デビュー。以来、極道モノからアクション、ホラー、ファミリー向け、青春モノなどジャンルを問わず作り続け、業界内では器用な作り手として名高い。海外での評価も高い。他の主な作品に「着信アリ」(04年)、「妖怪大戦争」(05年)、「クローズZERO1、2」(07年、09年)、「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(07年)、「ヤッターマン」(09年)、「十三人の刺客」(10年)、「忍たま乱太郎」(11年)、「一命」(11年)など。初めてはまった日本のポップカルチャーは、テレビ人形劇「チロリン村とくるみの木」(1956~64年)と「ひょっこりひょうたん島」(64~69年)。「こちらは(年齢的に)言葉をちょっとしゃべるくらいの、ほとんど動物の状態でしょ。人ってナニ?と自覚する前の状態ですから。それでさえも、(魅了され)見ちゃうんですから、まさしくポップカルチャーですよね」と評する。

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