はじめの1巻:「きみが心に棲みついた」 トラウマ抱える女性の成長物語 「依存的な恋」、作者も

天堂きりんさんのマンガ「きみが心に棲みついた」(講談社)1巻の表紙
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天堂きりんさんのマンガ「きみが心に棲みついた」(講談社)1巻の表紙

 1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「Kiss+(キスプラス)」(講談社)で連載、過去に男性から受けた暴力によってトラウマを抱えた女性が新たな人生を踏み出そうとする姿を描いた天堂きりんさんのマンガ「きみが心に棲みついた」です。

ウナギノボリ

 学生時代、男性から暴力を受け、深く傷ついた小川今日子。人前だと焦って挙動不審気味になってしまうため、一部の人間から“キョドコ”と呼ばれている。年月が経ち、下着メーカーで働くようになった今日子はある日、合コンに参加。周囲とうまくなじめない自分に嫌気がさしていると、話題は自分を傷つけた男性のことへ移り、今日子はパニックを起こす。「ちゃんとした恋愛をしてくれる人なら誰でもいい」という今日子に、合コンで出会ったばかりの男性・吉崎は「キミは人の意見に流されて生きている。そんな奴は本気で人を愛することができない」と指摘してその場を後にする……。

 ◇編集部からのメッセージ Kiss編集部 織内彩さん 「依存的な恋、天堂さんも思い当たるフシが」

 あなたの愛しいあの人への思い。それは恋? それともただの依存……? 誰しも「依存みたいな恋」の経験はあるのではないでしょうか。将来絶対そうならないとは断言できないはず。天堂さんと私自身、思い当たるフシが……。でも依存的な恋って何が悪いのか? 純粋さに変わりはないのに……? 誰の心にも純粋さ故の狂気って巣食ってるでしょ!?ってことで始まった作品です。

 主人公は依存傾向が強い女子。嫌われないか心配でしたが、中途半端になるより、キモい・イタいと思われてもいいから吹っ切れたキャラを……と、今の形に。結果「健気、可愛い」とおおむね好評です! 不器用で鬱陶(うっとう)しくて、でもピュアで頑張り屋な娘ですので、行く末を見守っていてください!! 麻生みこと先生の帯コメントにあるように「キョドコに幸せになってほしいような、どこまでも堕ちるのを見てみたいような……」と、そう思っていただきたいですね。

 最後に装丁推しを! ぱっと見ただけでテンションが上がる鮮やかピンク!! 天堂さんは絵が非常に可愛いので、正直このデザインでいいのかと不安もありましたが、デザイナーさんを信じて良かった。ジャケ買いしてくださる方も少なくないという、可愛くって仕方ない装丁の第1巻です!!

 ◇書店員の推薦文 恵文社バンビオ店 宮川元良さん 「彼女には、エールを送り続けたい」

 挙動不審な主人公、キョドコを見て、こういう子おるなー、と思いながら読みました。、なんとか前向きになろうとする彼女、なんだかんだで、へこたれても立ち上がる、なかなか根性もある彼女に「踏ん張れよー、へこたれるなよー」と気付けばエールを送っておりました。作中の言葉で「見てくれている人はちゃんといる」というセリフがあるんですが僕もそう思います。過去の男にとらわれ、仕事も恋も難儀尽くしですが、彼女には、エールを送り続けたいと思うのです。踏ん張れキョドコ!

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