汚れたアヒル:舞台で初共演の市川知宏&黒川智花「やりやすい」と息ピッタリ

舞台「汚れたアヒル」で初共演する、黒川智花さん(左)と市川知宏さん
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舞台「汚れたアヒル」で初共演する、黒川智花さん(左)と市川知宏さん

 俳優の市川知宏さん(20)と女優の黒川智花さん(22)をダブル主演に迎え、3年ぶりに再演される劇団「PU−PU−JUICE」の舞台「汚れたアヒル」が15日から東京・新宿の劇場「SPACE107」で上演される。今作で初共演を果たす主演の2人に、お互いの印象や、初日を目前に控えた心境、作品の見どころを聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 「汚れたアヒル」は、都会の片隅で共同生活をしている貧しい若者たちの元に美しい青年・純也(市川さん)が新しくやってくる。どこか影のある純也はなぜか多くを語ろうとせず、周囲に心を許そうとしない。しかし、そこで暮らす美しい優希(黒川さん)に出会い、その強い瞳に引かれていく。やがてお互いに心を通わせるが、純也の誰にも言えない秘密が事件へと発展し、すれ違いの愛の物語がはじまる……というストーリー。前回と同様、同劇団の山本浩貴さんが脚本と演出を手がけている。

 「再演ということで、劇団のみんなが『前作よりもいい作品にしたい』っていう気持ちでやっていますし、台本も新しくなっているので前回とはまったく違うものになっていると思います。それから演出家の山本さんもよく言うんですが“パワーとテンポ”がある舞台になりますね、きっと」と黒川さんが今作について語ると、市川さんも大きくうなずき、「自分も演じていて毎回ワクワクするし、やってる方が生き生きとしてるんで、そのパワーが見ている人にも伝わると思うんですよ。体育会系でみんなが熱いし、いいもの作ろうって試行錯誤しながら演じているんで、稽古で毎日いいものを作っていって、初日には最高なものを見せたいですね」と気合十分。

 役柄について、黒川さんは「私の役は、父親に借金があって返済のために夜の世界で働いている女の子。誰かのために一生懸命尽くしたり、逆境にあっても負けないで強く『がんばろう』って前を向くところは、共感できるなって思いますね」と語り、続けて「喜怒哀楽を表現することで相手との関係性を表現しているので、楽しいところは思いっきり笑ってますし、泣くところはガーッと感情出しているので、稽古が終わった後『疲れたでしょ?』って聞かれるんですが、ぜんぶ感情出してすごく気持ちいい感じですね」と明かした。

 純也役の市川さんは、役との共通点について「純也は孤独を感じてる人間なんです。僕もごはんに行くとき携帯を見て『あれ、あんまり誘える人いないな』って。それで誘った場合も、返事がかえってこなかったりすると『あれ、孤独だな』って感じたりします(笑い)」とジョークを交えて分析しつつ、「それから、笑っちゃいけないキャラなんですけど、笑えるシーンも多いので、人のお芝居を見て笑っちゃうんですよ。役柄的にはクールで笑わない性格なんですけど。崩されちゃいますね」と苦笑した。

 市川さんが「楽しくてしょうがない」と語る稽古場は、共演者同士でニックネームをつけて呼び合い、合間には独自のゲームを楽しむなど、とても良い雰囲気だそう。「稽古も体育会系なので、もも上げしながらせりふを言ったり(笑い)。それと、ちょっとの休憩でも読み合わせをみんなでしたりしてるんです」と黒川さんがいうように、舞台にかける熱気が充満しており、稽古が終わると、みんなで近所のラーメン屋で“にらラーメン”を食べながら、演劇論を交わしているという。「いいなって思ったのは、新しい台本を渡されるたび、その部分を1回演じた後、毎回みんなが絶対拍手するんです。何気ないことなんですけど、それが温かいなって」と市川さん。

 劇団内で「知(とも)」「智(とも)ちゃん」と呼び合う2人は、初共演にもかかわらず、お互いに「やりやすい」と口をそろえる。「芸歴も年齢も先輩なので、僕は最初、後輩っていうスタンスでいたんです。でも話しやすくて今は距離感が近いですね。それと、しっかりしたイメージだったんですが、実際接してみるとほんわかしてます」と市川さんは話し、一方の黒川さんは市川さんを「逆にしっかりしてるんだなって。最初はあんまりしゃべらないのかなって、おとなしいイメージがあったんですけど、みんなの中にいると人一倍楽しそうにしてますし、ムードメーカーですね。自然とみんなの輪の中に入ってニコニコしてるっていう印象があります」と語った。

 また、お互い大学生で、キャンパスライフの話で盛り上がることもあるという2人。ちょうど舞台初日は黒川さんが通う亜細亜大学の卒業式にもあたり、「式には出られないけど、(卒業できて)『やった!』って感じですね」と黒川さんは満面の笑みで喜び、大学生活を「人に恵まれてました。高校時代もそうだったんですが、仕事と両立するっていうのがすごい難しくて、でも良い仲間にも出会えて、仲の良い先生もできて……」と振り返った。さらに「うちの大学は野球部が強いんですけど、部員のみんなが私の卒業のお祝いにメッセージを色紙に書いてプレゼントしてくれたんですよ」とうれしそうに語ると、現在、早稲田大学2年生の市川さんは「そんなに友達がいていいな」としきりにうらやましがる半面、「大変ですけど、勉強はやっぱり大学に行ってるから経験できることなんで、それは大切にしたいですね」と充実感を感じているという。

 改めて初日を迎える心境を聞くと、黒川さんは「早く舞台の上でお芝居したいなって思いますね」と胸をはずませ、「お客さんが近い劇場なので、より感情が伝わるっていうか、ごまかしがきかない舞台。だからうそのない芝居で、ひとつひとつ魂込めてやりたいなって思います」と意気込みをみせた。また、「シーンが盛りだくさんですし、たくさん人も出ていて、それぞれの人間模様が描かれているのでおもしろいです」とも語り、市川さんは「飽きずに楽しめる作品。一回見に来てもらったら、魅力が全部伝わると思うんですよ。だから一回でいいから、ちょっと来てください!」と力をこめた。

 舞台「汚れたアヒル」は15日~25日公演。16日に市川さん、21日に黒川さんのアフタートークショーを開催予定。

 <市川知宏さんのプロフィル>

 1991年生まれ、東京都出身。第21回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを獲得。ドラマ「乙男(オトメン)」(フジテレビ系)や「ホタルノヒカリ2」(日本テレビ系)に出演し注目を集め、「クローンベイビー」(TBS系)で主役を演じる。「書道ガールズ!!わたしたちの甲子園」など映画にも出演し、昨年、上演された「ピグマリオン」では初舞台ながら主演を務めた。3月17日から出演映画「桜蘭高校ホスト部」が公開される。

 <黒川智花さんのプロフィル>

 1989年生まれ、東京都出身。2002年に「愛なんていらねえよ、夏」でドラマデビュー後、「女帝薫子」(テレビ朝日系)や「JIN−仁−」(TBS系)、映画「下弦の月~ラスト・クォーター」、キャラメルボックスの舞台「君の心臓の鼓動が聞こえる場所」など多数に出演。4月2日スタートのNHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」や、6月9日公開の映画「道~白磁の人~」も今後控えている。

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