1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「花とゆめ」(白泉社)で連載、勝ち気な姫と少年ながら世界を統治した年下の王とのラブコメディーを描いた椎名橙(しいな・だい)さんのマンガ「それでも世界は美しい」です。
ウナギノボリ
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「雨の公国」の第4公女で、雨を降らせることのできる能力を持つニケ・ルメルシエは「晴れの大国」の太陽王リヴィウス1世(リビ)の元へ嫁いできた。それは即位からわずか3年で世界を征服した太陽王が、雨の公国に自治を認める代わりに娘を差し出すよう、求めてきたためだった。ニケは「どんな人物でも愛してみせる」という決意で太陽王の宮殿を訪れるが、そこに現れた王はなんと、自分より若くまだ幼さの残る少年。その少年王に「太陽に飽きたから雨を降らせろ」と言われたニケは、リビにつかみかかって……。
「それでも世界は美しい」は、読者の熱い支持によってシリーズ化、連載化を果たした作品です。このアメフラシの公女と世界を統(す)べる少年王の物語は1話だけの読み切りを前提にスタートしました。第1話を読んだ読者からの続編を望む声は大きく、半年後、第2話を発表。当初の予定では、それが最終話。当時掲載誌では、ファンタジーより間口の広い作品が望まれていたこともあり、人間ドラマを描くことにたけた椎名先生には、別のリアルストーリーにチャレンジしていただいたりもしました。
しかし、読者の「続編を読みたい!」という声は、時を隔ててもやむことがなく、その熱意に後押しされる形で、椎名先生の内でもこの2人を描きたいという思いが醸成されて、実に2年の時を隔てて、第3話の掲載に踏み切ったのです。結果、読者の反応は1、2話を超える大きなもので、作品の連載化が決定しました。
奇抜な設定と描写で「すごい」と評される作品も多い中、この作品は、「正統派」と呼んでいい作品だと思います。描かれている物語と感情は、著者の持つ人と世界への優しさであふれています。暗い象徴とされることも多い雨を、美しい世界の一部として描く、花とゆめで圧倒的に支持された感性にぜひ触れてみてください!
ニケ姫の反抗的な態度は、世界征服をして退屈な少年国王リビには、うってつけの暇つぶし人材ですよね。うわさ通りの冷血で無慈悲なお方なら、即刻クビはねられますよね。毎回、年下のリビに口でも行動でも一枚も二枚も上手でやられっぱなしで赤面しちゃう純情なニケ姫がとても可愛くて、次はどう反応するのかリビと共にドキドキワクワクさせられます。じゃれあうラブだけじゃなく、お互いを思う場面では胸がキュンとしちゃいます。そしてニケの雨はほんとにすてきだなと思う。だってこの本のタイトルが絶対、頭によぎってしまいますから。
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