ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、ニート美少女の地縛霊との出会いをきっかけに、不思議な宝物を巡る争奪戦に巻き込まれた主人公らの奮闘を描く「龍ヶ嬢七々々(りゅうがじょうななな)の埋蔵金」(鳳乃一真著、赤りんご画)です。エンターブレインファミ通文庫編集部の衣笠辰実さんに作品の魅力を聞きました。
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−−この作品の魅力は?
「龍ヶ嬢七々々の埋蔵金」の魅力は、まずはスケールの大きさです。物語の舞台である「七重島(ななえじま)」は学生のための人工島です。多くの学校があり、歓楽街や温泉街もあります。暗黒街すら存在します(笑い)。住人もほとんどが学生で、自由気ままに学生生活を謳歌(おうか)しています(もちろん勉強はしっかりやらねばなりませんが)。この作品がすごいのは、この七重島の歴史や社会システムがしっかりと作り込まれていることです。さらにその上で、七重島を造った7人の天才学生集団「GREAT7」(その一人がヒロインの龍ヶ嬢七々々)、島の各所に隠された「七々々コレクション」と呼ばれる不思議な宝物の数々の存在、そしてそれをひそかにねらう複数の勢力といったさまざまな要素が絡み合って、壮大な世界観を構成しています。主人公の重護は第三高等部の「冒険部」に所属し、「七々々コレクション」の争奪戦に参加することになります。
もちろん多彩なキャラクターたちも魅力です。それも表面的な魅力ではなく、それぞれに悩みやコンプレックスがあり、「七々々コレクション」を手に入れたい理由があり、所属する組織への思いがあり……というように、等身大の少年少女として生き生きと描かれています。特に“名探偵”を自称する少女・天災の言動に注目してほしいですね。
また担当編集として最も大事だと思っているのは、主人公の重護です。おばかでエロくてお調子者だけど、やるときはやる男気のあるキャラクター・重護の成長物語であることが、本質的にはこの物語の一番の魅力なのかもしれません。そんな重護と一緒に、文字通り読者の皆さんにとっての“埋蔵金”をこの作品の中に探していただけたらうれしいですね。
−−作品が生まれたきっかけは?
本作は11年の第13回えんため大賞小説部門の「大賞」受賞作です。選考では毎年賛否両論出るのが普通ですが、「七々々」は満場一致でした。一種の叙述トリックを駆使した筋書きに皆が驚かされたことも高評価でしたが、何より「続きが読みたい!」という期待感を抱かせてくれる世界観の評価が抜群に高かったです。えんため大賞から8年ぶりの「大賞」としてファミ通文庫から自信をもって世に送り出しました。
−−作家さんとイラストレーターさんはどんな方でしょうか。
作者の鳳乃一真先生は、端的にいって重護みたいな方です。エロいとかお調子者とかいったことではなく、人(読者)を驚かせようと日々画策しているところが、という意味ですが(笑い)。頭の中にある物語をただ見せるのではなく、どういうふうに見せたら読者に楽しんでもらえるか常に意識しているところが新人離れしていてすごいと感じます。
イラストレーターの赤りんご先生の描くイラストは、キャラの可愛さやカッコよさが魅力なのはもちろんですが、それ以上に一度見たら忘れない個性があります。デザイナーとしてもお仕事をされていて、そのセンスが構図や彩色のデザイン性の高さに表れているようです。さまざまな衣装やアイテムの総合的なデザインもお任せできて心強い限りです。イラストの細部にひそかに込められた遊び心も魅力で、たとえば2巻のカバーイラストに描かれた電話のダイヤルの数字をよーく見てみてください(笑い)。
−−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。
やはり担当編集として「七々々」の続編が最初に読めること。そして赤りんごさんのハイクオリティーなイラストが最初に見られることが一番うれしいですし、興奮する瞬間です。
特に強調するほど大変なことはないですが、あえていえば内容的にスケールが大きいので収拾がつかなくならないように今後注意していくことでしょうか。一方で小ぢんまりまとまらないようにするバランス感覚も大切で、そのあたりを鳳乃先生と一緒に模索していきたいと思います。
−−今後の展開、読者へ一言お願いします。
これから3、4巻とまだまだ新キャラクターが出てきて世界観が広がっていきつつ、龍ヶ嬢七々々という存在の謎が少しずつ明らかになってきます。その中でサブキャラクターたちをフィーチャーしたエピソードも語られることになります。本編に入りきらないエピソードはファミ通文庫の公式ウェブマガジン「FB Online」で短編としてどんどん発表していきます。サブキャラクターを主人公にした別シリーズや、同じ「七重島」を舞台にした全く別な物語なども考えられます。そんな大きな可能性を秘めた作品ですので担当としても今後が楽しみです。また「週刊ファミ通」でのコミカライズの本格連載が決定したのを皮切りに、さらにいろいろな形でメディアミックス展開していきたいと思っています。お楽しみに!
エンターブレイン ファミ通文庫編集部 衣笠辰実
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