朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第80回 水上勉「ブンナよ、木からおりてこい」

「ブンナよ、木からおりてこい」作・水上 勉(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「ブンナよ、木からおりてこい」作・水上 勉(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第80回は水上勉の「ブンナよ、木からおりてこい」だ。

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 8月になりました!

 外で読書……というには、暑さも日差しも厳しい季節。

 例年より厳しい暑さに見舞われている今年の夏、私の住んでいる地域でも光化学スモッグ注意報が流れる回数が増えているような気がします。

 皆さんも、熱中症対策を忘れないようにしてくださいね。

 ちなみに私たち朗読倶楽部の暑さ対策はというと……。

 学校図書館の司書控え室に部室を間借りしていることは以前にもお話ししましたが、元は荷物部屋として使われていた場所ですから、エアコンはもちろんのこと、扇風機もありません(>_<)

 図書館の対面朗読室をお借りできることもあるのですが、1クラブがいつも占有するのは問題がありますし、仮に部屋が空いていても、防音のためにエアコンが専用になっていることから、節電問題という点からも使い放題とはいきません。

 結局、メンバーと先生のお家に持ち回りでお邪魔するようになったのですが、学校から一番近い私の家が自然とたまり場のようになっているような感じです。

 さて、ここで暑さ本番のこの時期にお誕生日を迎えた方の中から、イギリスの著名な作家4人をご紹介しますね。

 まず7月30日は、エミリー・ブロンテさん(1818年生まれ)。

 荒野の館を舞台に繰り広げられる復讐劇「嵐が丘」は、舞台劇でご存知の方も多いのではないでしょうか。

 翌31日は、 J・K・ローリングさん(1965年生まれ)。

 「ハリー・ポッターシリーズ」であまりにも有名ですね。

 月が変わって8月2日は、グラハム・ハンコックさん(1950年生まれ)。

 世界各地の超古代文明を調査した「神々の指紋」は、日本でもベストセラーになりました。

 最後に3日は、フィリス・ドロシー・ジェイムズさん(1920年生まれ)。

 1992年に発表したディストピア小説「人類の子供たち」は、映画「トゥモロー・ワールド」の原作になりました。

 ではここで、朗読倶楽部のお話……最後の大会前のお話、第8回です。

 大会で知り合った小口のどかさんが所属する文芸部との交流戦。

 初めて案内される他校の部室に興味深々の私たち。

 特にみかえさんと私は、朗読倶楽部結成前に文芸部存続を目指していましたから、これからお邪魔する部室が、「もしかしたら自分たちが居たかもしれないところ」のように見えていたんだと思います。

 ところが、案内されたのは期待していた文芸部部室ではなく、電子オルガンが置かれた音楽室でした。

 小口さん曰く、部室での声を出す練習は難しい上、ある程度の人数が集まれる場所はここだけなのだとか。

 ……どうやら、練習場所に苦労しているのは私たちだけではなかったようです。

 朗読メンバーは文芸部全員ではなく、希望者だけが集まった「文芸部内朗読サークル」のような感じだそうで、ちょっと変わっているなと思ったら「中学生が部長のあなたたちほどじゃない」と、突っ込みを受けてしまいました……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 水上勉「ブンナよ、木からおりてこい」

 こんにちは、今回ご紹介する1冊は、トノサマガエルの「ブンナ」が椎の木を舞台に繰り広げる命の物語、水上勉(みなかみ・つとむ)さんの「ブンナよ、木からおりてこい」です。

 1972年に「蛙よ、木からおりてこい」の題名で発表されたこのお話は、1979年に現在のタイトルに改題され、舞台劇として全国で上演されて大きな成功を収めました。

 その後1986年には、舞台化の際に変更された戯曲部分を小説側にフィードバックするなどの加筆修正が行われた改訂版が出版されているんですよ。

 「井の中の蛙(かわず)大海を知らず」とは荘子さんの言葉ですが、外の世界にあこがれたかえるは一体何を見たのでしょうか……?

 トノサマガエルのブンナは、町外れのお寺にある小さな沼で暮らしていました。

 カエル仲間でも特にジャンプが得意なブンナは、太い椎の木の途中にある大きなコブまで登り、高いところからトビやヘビなどの天敵の接近を知らせては、沼の仲間たちの尊敬を集めていました。

 ある日、「椎の木のてっぺんまでのぼれるかい」と、カエル仲間に聞かれたブンナは、高さ10メートルはある椎の木の登頂に初めて挑戦します。

 無事頂上にたどり着いたブンナが見たものは、外の世界を一望できるすてきな眺めと、土だまりのできた広い平地でした。

 「この頂上で一夜をあかせば、仲間たちは自分を真の勇士だと称えるに違いない」

 ブンナの胸中に、ひそかな野心が芽生えます。

 しかし……秋が深まる10月、再び椎の木の登頂を目指した彼を待っていたものは、想像を超える厳しい自然の掟(おきて)だったのです……。

 お話の冒頭にブンナが自分の名前の由来を考えるシーンがあるのですが、作者の水上勉さんによると、お釈迦様のたくさんいるお弟子さんの1人の名前から取られたとか。

 賢く思慮深かったお弟子さんが抱えていたという苦悩を、自然界の弱者と言われる「カエル」の身に置き換え、大人も子供も一緒に考えられる物語として仕上げられたそうです。

 人間社会でも弱肉強食が当然と言われる中、誰かを抜き去ることで失ってしまうものの意味を、ブンナと一緒に考えてみませんか?

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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