高島礼子:「今まで出したことがないような声」を出すのが快感に 「マダガスカル3」で声の出演

1 / 9

 1日に公開された劇場版アニメシリーズ3作目となる最新作「マダガスカル3」の日本語吹き替え版で、カバのグロリアの声を担当している高島礼子さん。レギュラーキャラクターのグロリアは、仲間たちの紅一点で、おちゃめで明るく愛らしいキャラクター。米国では黒人女優のジェイダ・ピンケット・スミスさんが声を担当し、高島さんは09年の前作、05年の前々作に続いて7年にわたって同キャラクターの日本語吹き替え版の声を担当している。「歌っているシーンは私の声だと信じてもらえない」というほど、“人格を変えて”アフレコに臨んだという高島さんに、収録時の苦労や作品の見どころなどについて聞いた。(毎日新聞デジタル)

あなたにオススメ

 日本語吹き替え版のアフレコは、本国の吹き替え入りの本編を見ながら、声をあてていく。高島さんはスミスさんの英語のせりふを聞きながら日本語のせりふを収録していったが、「本国の方は、高い声と低い声のメリハリがものすごくあって、同じ方とは思えないような差があるんですよ。私の声はもともと低い方だし、淡々と話してしまうクセがあるので、(本国のものに)近づけるためには、今まで自分が出していないような声を出すようにと、パート1から引き続き気を付けました」という。その結果、「歌っている場面は『本当にこれ高島さんが歌っているの?』といわれるくらい、多分いままで出したことのないような声を出してますね」と普段とは異なる声を出した。

 完成した日本語吹き替え版を見て、「いままで出した経験のないような声を出して歌っていて、あまりにも聴いたことがない声なので、パート1や2では他人の声みたいに感じました。それが変にクセになるような快感があって、パート3では、私もやればこんなふうにできるんだという気持ちになりました」と変化を楽しんでいる。

 シリーズも3作目となり、ライオンのアレックス役の玉木宏さん、シマウマのマーティ役の柳沢慎吾さん、キリンのメルマン役の岡田義徳さんと、日本語吹き替え版キャストはおなじみの顔ぶれが続投した。2作目までは他のキャストが収録した後に高島さんが声を入れるケースが多かったが、今回は割と最初の方に声を吹き込むことができた。「今回は柳沢さんのマーティの一部のせりふしかとっていない、割と初期の段階で入りましたので、意外と自由にできました。いままではみなさんとった中で最終的に入るということが多かったんですけど、そうするとなんか焦っちゃうんですよね。なんでみんなこんなに上手にできるんだろうって。今回はほぼ最初だったので、いいや、思い切りやっちゃおうって」と伸び伸びとできたという。

 声優の仕事は女優として演技するのとはやはり勝手が違う。「アフレコもどうしても(演技と同じように)気持ちでやろうとしちゃうんですけれども、最近、吹き替えの作品なんかを見てみると、プロ(の声優)としてやっている方と私たち役者がアフレコに挑戦するってやっぱり違うじゃないですか。技術があるんだなあって。気持ちだけではない、気持ちとプラス、声のトーンの出し方というか。そこを理解してできるようになるまでにはなかなかいけないんですけど……」と苦笑しながらも、「演出家の方(監督)がとってもうまいんですよ。だから『そこはこんな感じで』という監督が例を出すその言い方がものすごく声優さんっぽくて。確かにそちらの方が見ている側は分かりやすいし。だから本当に煮詰まったときには『すいません、監督1回言ってみてください』ってお願いしていました」とスタッフと共同作業で進めた。

 マイクの前ではつい動き過ぎてしまって注意されたことも。「マイクの前で思いっきり体を動かしています。体を動かすと、マイクは動かないので(笑い)、『あんまり動かないでください』って監督から言われちゃうんです(笑い)。でもやっぱり体を動かさないと出てこないところがあるし、とくにこの動物(のキャラクター)たちはよく動いているので。あと今回、雄たけびがとっても多いものですから、ついついそんな気分になって相当動いてしまいましたね」と笑う。声優の仕事は「本当にむずかしいなって。なかなか慣れることはないです。でも本当に終わったあとは『ああ楽しかった』というような、不思議なんですけれども、達成感というか、やり終えたみたいな、やったーという感覚になるんです。これはなかなかない経験ですね」と充足感を味わっている。

 新作はシリーズ初の3D作品となった。声の出し方も3Dならではの出し方を工夫したという。「今回3Dということで声も通常の何倍も張ってくださいという部分もありました。そういえば、自分でも3D作品を見ると、確かに迫りくるものを感じさせるには、声が大事だと感じました。だからすごく頑張んなきゃいけないなと。3Dを見ている方の気持ちになって声を出さなきゃいけないなと思いました。それにサーカスシーンはファンタジーな世界ですし、アクションも満載だし、これは本当に映画館で3Dで見なきゃいけないなと思いました」と3Dならではの作品ということをアピールする。

 女優としてさまざまな映画、ドラマなどの人気作に出演している高島さん。今後やってみたい役として「たとえばこのグロリアみたいな役って実写ではやったことないんですよね。こういう感情表現の豊かな役というんですか、ギャーギャー、ワーワーやかましいというか、あまり感情を殺さずに表に出す役をやってみたいですね。あと、自立していない役っていうんですか、依存しているというか、弱い女性の役。あまりやったことのない役ってたくさんありますよね。そういうのに挑戦してみたいですね。やっぱりこういう女優という職業に就けている限りは、自分の中にあんまりなさそうだけれどもやったらどうなるのかな、どう演じられるのかなという役に挑戦したいですね」と前向きに語った。

 次回は、高島さんの休日の過ごし方や生き方について聞く。

<プロフィル>

 1964年7月25日生まれ、神奈川県出身。特技はモータースポーツで「国内A級ライセンス」を取得している。88年、時代劇ドラマ「暴れん坊将軍」(テレビ朝日系)で女優デビュー。その後、「女教師」(98年)、「傷だらけの女」(99年)で主演するなど数々のドラマに出演している。12年は、 連続ドラマ「ハンチョウ5 警視庁安積班」に出演。映画は、93年に「さまよえる脳髄」で初出演。01年には「長崎ぶらぶら節」での演技で第24回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。そのほか、「犬と私の10の約束」(08年、本木克英監督)、「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」(10年、錦織良成監督)「SPACE BATTLESHIPヤマト」(10年、山崎貴監督)や「HOME 愛しの座敷わらし」(12年、和泉聖治監督)など数多く出演。1日公開の劇場版アニメ「マダガスカル3」の日本語吹き替え版で、「マダガスカル」(05年)、「マダガスカル2」(08年、吹き替え版は09年)に続いてカバのグロリア役を担当している。

写真を見る全 9 枚

アニメ 最新記事