ラノベ質問状：「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」　次巻で最初の山場？

　話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」（渡航著、ぽんかん（8）画）です。小学館ガガガ文庫編集部の星野博規さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

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　−−この作品の魅力は？

　一言で言うと、タイトルのニュアンスが伝えるとおり、「まちがっている青春ラブコメ」というところです。主人公の八幡は、友達もなく、恋人もいない根性の腐ったひねくれ者。普通だったらそんな自分に嫌気が差したり、「変わらなきゃ」と思うであろうところを、八幡は「他のやつらのほうがまちがっている」と考えるような人物です。

　恋愛をして、友達を作って、青春を謳歌（おうか）する、といったリア充的要素を、常識にとらわれているみんなのほうがまちがっているのだと、とことんまでに否定し「ぼっちこそ最強である」と、まちがった悟りに至ります。そんな八幡がある部活に強制入部させられるところから話は始まるのですが、その部活には一見完璧な「美少女」雪乃がいて……。シチュエーションだけ考えれば、まさに「いわゆる」なラブコメが始まりそうな予感なのですが、そうはならないところが読んでのお楽しみ。ぜひ、八幡含め登場人物の「まちがい」っぷりを楽しんでいただければ。

　−−作品が生まれたきっかけは？

　渡航先生は「あやかしがたり」（第3回小学館ライトノベル大賞・ガガガ大賞受賞作）という剣術、妖術入り乱れる時代物がデビュー作。その「あやかしがたり」のすぐ次のシリーズがこの「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」なんですが、「あやかしがたり」の執筆中は渡先生がラブコメを書く、イメージが担当編集の僕の中に全くなかったので、次回作に「ラブコメを構想中」と聞いたときにはびっくりして「やめたほうがいいのでは」と言った覚えがあります。それで結局、別企画とラブコメの企画と企画書を2案いただいたのですが、断然ラブコメのほうが面白そうだったので、「ラブコメで行きましょう！」と。その企画が元になって「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」が生まれました。

　後日、先生に聞いたら「2案出しておいて、わざと通したい方を選ばせるようにする作戦」だったらしいのですが。まんまと術中にはまったことになります。いや、うすうす感づいてはいましたよ？　その後企画は順調に進んだのですが、タイトルについてはとにかく何案も考えました。お互いに案を出し合い、お互いの案にダメ出しをし、というのを繰り返した結果、言葉をこねくり回しすぎて完全に「何がいいのかわからない」状態に陥り、どんどんストレスがたまってきて、最後はお互い「じゃあもうそれでいいです」みたいな感じでちょっと雰囲気悪くなってました（笑い）。

　−−作家さんとイラストレーターさんはどんな方でしょうか。

　渡先生は、twitterなどでよくつぶやかれているのでご存じの方も多いかと思いますが、繰り出される「後ろ向きな名言」が八幡をほうふつとさせる人物です。でもお会いして話すと、非常に社交的で楽しい方なんですが。そのギャップが面白いですね。

　ぽんかん（8）先生は、pixvで初めてイラストを拝見したとき、彩色の奇麗さと、女の子の表情の可愛さがとにかく印象的で、何より絵柄に既視感のない「新鮮さ」を感じました。当時ライトノベルのイラストは初めてということで、「これから始める新シリーズにはこのフレッシュさが必要なんだ！」と前のめりで依頼させていただきました。最初の打ち合わせの時に、ヒロインの雪乃のラフ絵を「あくまで僕の中でのイメージなのですが」と渡され、それが想像以上に素晴らしかったのを覚えています。その時のラフ絵が元になって、1巻のカバーイラストのビジュアルもすんなり決まりました。

　−−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。

　興奮することは、自分でも今までに読んだことのないタイプの作品なので、主人公とヒロインたちの関係がどうなっていくのか、純粋に楽しみな点です。原稿の初稿をいただくときはいつもドキドキします。

　そして、もう一つ楽しみなのが、その後、ぽんかん（8）先生のイラストが上がってくるときですね。このシーンがこういうすてきな絵になるのか！という新鮮さがあって、こちらも毎回毎回楽しみです。本当に半分以上読者の気持ちで「面白い！」と楽しんでいます。

　大変なことは、楽しんだ次の瞬間から、毎回発売日に遅れないようにと締め切りとのギリギリの戦いが待っていることです。

　−−今後の展開、読者へ一言お願いします。

　1巻のときから口コミや書店様の評判でじわじわと売り上げを伸ばしてきたシリーズ、ついにアニメ化も決定し、注目度も増して今一番旬な作品と言えるでしょう！ありきたりのラブコメはちょっと、という方にもぜひ読んでいただきたいです。

　まだ原稿ができあがっておりませんので何とも言えませんが、実は、次巻の6巻ぐらいで、ストーリーが一つ目の大きな山場を迎えるかも？　雪乃と八幡の関係に変化はあるのか、そしてもうひとりのヒロイン結衣は……？さらにリア充組であるイケメンくん、葉山が……！？これ以上はあまり具体的なことが言えなくてすごくはがゆいですが……とにかく、お楽しみに！

　小学館　ガガガ文庫編集部　星野博規