ウルトラマン:「子どもたちに助けられた」スーツアクターが語る特撮現場 WOWOWでHV放送

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 特撮番組の名作「ウルトラマン」ハイビジョンリマスター版が、11日から18日までの8日間、WOWOWで一挙放送される。このほど、それぞれの放送日の冒頭と最終放送話の最後に放送されるスペシャルトークコーナーの一部の収録が行われ、平成版「ガメラ」シリーズや、「巨神兵東京に現わる」のメガホンをとった樋口真嗣監督と、ウルトラマンのスーツアクターを務めた古谷敏さんが取材に応じた。“ウルトラマン世代”だという樋口監督は「今日初めて分かったことがたくさんある。天にも昇るような心地というのは、まさにこのこと!」と念願の対談に感激し、古谷さんも「素晴らしい方が熱き心でウルトラマンを語ってくれる。俳優冥利に尽きる」と喜び、撮影当時の思いを語った。(毎日新聞デジタル)

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 トークコーナーの収録は、特撮がテーマの展覧会「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」を開催中の東京都現代美術館(東京都江東区)で行われた。白熱した収録の興奮冷めやらぬ樋口監督は「ちょっとしたエピソードの中にある、段取りじゃないウルトラマンの面白さ。戦いだけを見たらウルトラマンってこう見えるっていうのを聞けたらいいなと思った。実際に演じた人の思いを聞けた。あと3回ぐらい対談したい!」と感激。古谷さんは「ウルトラマンの偉大さを感じました。これは他の人には誰にも味わえない喜び。ウルトラマンをやってよかったな、とひしひしと感じますね」と笑顔で語った。

 ウルトラマンについて、当時の古谷さんは「地球を守るヒーローの前に、1人で自分の星から離れて地球に来た寂しさとか憂いや哀愁を演じていくべきじゃないかな」と思ったといい、「優しさや正義を子どもたちがどのように感じてくれるか。ただ怪獣を倒しているだけじゃないと子どもに分かってもらうための演技を計算していました」と明かした。樋口監督は「子どもだった当時は明確ではないけれど、『ウルトラマンは何を考えているんだろう』ともやもやしていた。今日、疑問が解けた。今日初めて気づいたけれど、単身赴任よりたちが悪い。自分の星に帰れないんだから迷子みたいなもんですよね」と興奮してうなずいた。

 そんな古谷さんだが、俳優として、表情で役を演じられないスーツアクターを辞めようと決意したこともあるという。特撮の撮影では「傷だらけだし、熱が出ても休めない。突き指やねんざなんてしょっちゅう」と肉体的な苦痛も多かったが、「特撮現場に俳優さんはいない。(ハヤタ隊員役の)黒部進さんも(フジ隊員役の)桜井浩子さんもたまに見に来るくらい。俺も(隊員がいる方の撮影を)たまに見に行くんだけれど、ああいうふうに俳優としてやりたいなと思う。彼らの隊員服のオレンジが、金色に見えて帰ってくる。行くと惨めになっちゃう。俺もやっぱり同じ俳優だから顔を見せたい」と精神的な苦痛があったことも告白した。

 しかし、古谷さんはウルトラマン役を辞めるつもりで乗ったバスで、子どもたちに出会って思いとどまったという。「一人残らずウルトラマンの話をする子どもたちの目を見ていたら、辞めようとしても辞められなくなった。ウルトラマンは、子どもたちに助けられたんです」と当時を感慨深く振り返った。樋口監督は「ウルトラマンは戦っていても寂しそうな感じがある。強いんだけれど、背中を押したくなる。『前かがみの姿勢じゃなきゃ嫌だ』と、庵野秀明監督も言っていた。エヴァンゲリオンの姿勢は、古谷さんからきてるんだ」と感心し、ハイビジョン放送は「録画で見ちゃだめ。ウルトラマンは、テレビを付けたらそこで始まるっていうワクワク感がなきゃだめなんだよ。見逃したらもう見られないという緊張感で、リモコン握りしめて見て!」と、力強くPRした。

 「ウルトラマン」ハイビジョンリマスター版は、11~18日の午後2時から全39話を放送。今冬には「ウルトラセブン」のハイビジョンリマスター版、13年には「ネオ・ウルトラQ」が放送予定。古谷さんと樋口監督のスペシャルトークは、14日(第16~20話放送)と16日(第26~30話放送)の本編前後に放送。古谷さんは、樋口監督の特撮映画の監督ならではのマニアックな質問に答えたり、撮影当時の苦労や裏話などを明かしている。

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