注目映画紹介:「プンサンケ」 38度線行ったり来たりする配達屋の男を中心に南北の分断を描く

(C)2011 KIM Ki-duk Film.All Rights Reserved.
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 ピョンヤンとソウル、北緯38度線を行ったり来たりする配達屋の男を主人公に「分断」を描いた「プンサンケ」(チョン・ジェホン監督)が18日に公開された。主人公の男には一切せりふがない。メガホンをとったのは、韓国映画界の鬼才キム・ギドク監督の助監督だったチョン・ジェホン監督で、キム監督が製作総指揮と脚本で参加している。キム監督が書き上げた脚本に心打たれたスタッフと俳優が、みなノーギャラで参加したという。

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 北朝鮮製のたばこの名前で「プンサンケ(豊山犬)」と呼ばれる男(ユン・ゲサンさん)は、ピョンヤンとソウルを行ったり来たりしている配達屋。連絡手段はなく、「帰らざる橋」にメッセージを残すと3時間以内でなんでも配達するという。ある日、韓国の情報部員から、亡命した元北朝鮮高官の愛人イノク(キム・ギュリさん)をソウルに連れて来いという依頼が舞い込む。いてつく寒さの中、危険をともにしながらの国境越えに、いつしか男とイノクとの間に複雑な感情が流れ始めていた。無事に元高官にイノクを引き渡した男だったが、韓国情報部員に拘束されてしまい、そこに北朝鮮の工作員も介入し、事態は複雑にからみあっていく……。

 ベースにはキム・ギドク流の狂気の愛があるが、描き方はエンターテインメントだ。主人公のプンサンケは鋼のような体の持ち主。どんな拷問に遭っても、アニメの主人公のように何度も立ち上がる。南と北が出し抜き合っている姿もユーモアたっぷりに描かれている。展開もテンポよく、おかしさと悲しさが交互にやって来る。プンサンケを演じるユンさんは元国民的人気グループ「god」のメンバーだったという。今作では眼光鋭く無精ひげでイメージを打ち破っている。プンサンケがイノクと一緒に裸で川を渡るシーンでは、マイナス15度のいてつく寒さの中で撮影が行われたという。体を張った芝居で、緊迫のシーンを闇夜に美しく映し出している。18日から渋谷ユーロスペース(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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