注目映画紹介:「あなたへ」 大スターの健さんが日常の風景に自然に溶け込んでいる

「あなたへ」の一場面 (C)「あなたへ」製作委員会
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「あなたへ」の一場面 (C)「あなたへ」製作委員会

 名優・高倉健さんと降旗康男監督の20本目のタッグとなった映画「あなたへ」が25日に公開される。映画「あ・うん」(89年)などで企画を担当し08年に亡くなった映画プロデューサーの市古聖智さんが残した原案を基にした物語。亡くなった妻の思いを胸に旅する男と、さまざまな土地での人々との出会いを軸に、家族の姿を日本の風景に刻んでいく。

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 倉島英二(高倉さん)は、北陸の刑務所の指導技官。長く独身だった英二は50歳を目前にして慰問に来た歌手・洋子(田中裕子さん)と結婚した。しかし、洋子は病気で亡くなってしまう。英二の元に死後、洋子から絵手紙が届く。そこには遺骨を故郷の海に散骨してほしいと書かれていた。そしてもう1通、洋子の故郷、長崎県平戸市の局留めの手紙もあることを知る。受け取り期限まであと10日。英二は洋子の故郷に向けて、妻と一緒に旅をするはずだった車で一人、平戸を目指す……という展開。

 健さんの6年ぶりの映画出演作だ。家族の絆うんぬんもあるけれど、なんといっても健さんの表情の味わい深さ(顔だけでなく、後ろ姿、立ち姿を含む)と風光明媚(めいび)な日本の風景が見ものだ。映画界の大スターでありながら、日常の風景にこんなに自然に溶け込める俳優はそうそういない。健さんとは初共演のSMAPの草なぎ剛さんもなかなか溶け込んでいて、俳優としての技量の高さに感心した。そのほか、ビートたけしさんは健さんと「夜叉」(85年)以来27年ぶりの顔合わせ。

 多彩な顔ぶれの俳優がどんな職業で出てくるのか、見ていて楽しい上、ロケ地でのにぎわいを想像しながら楽しむのもまた一興だ。個人的には兵庫県の竹田城址のシーンはとくに印象に残った。撮影はさぞかし大変だっただろうと思われる山奥で、天に昇ったような絶景が観客を包み込み、日常の悩みや悲しみはちっぽけなものとして吹き飛ぶほどだった。映画は25日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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