朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第82回 三上延「ビブリア古書堂の事件手帖」

「ビブリア古書堂の事件手帖−栞子さんと奇妙な客人たち」作・三上 延(メディアワークス文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「ビブリア古書堂の事件手帖−栞子さんと奇妙な客人たち」作・三上 延(メディアワークス文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第82回は三上延の「ビブリア古書堂の事件手帖」だ。

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 皆さんは「ポンペイ最後の日」という本をご存じですか? このお話の舞台となる古代ローマ帝国のリゾート地・ポンペイは、現在のイタリア・ナポリにあります。今から1900年以上前の西暦79年8月24日、ポンペイは、ほど近い湾岸に位置するベスビオ山の大噴火に見舞われました。翌25日に発生した大規模な火砕流は一瞬にして街全体を埋め尽くし、多数の死者を出したといいます。その後18世紀になって始まった発掘作業はなんと現在も続けられているそうで、1997年には世界遺産として登録されました。

 この実際に起こった災害に着想を得て、イギリスの作家エドワード・ブルワー=リットンさんが1834年に発表したのが「ポンペイ最後の日」なんです。壮大で娯楽性に富んだこのお話、いずれご紹介させてくださいね。

 それでは恒例、作家さんのお誕生日のご紹介です。まず8月20日は、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトさん(1890年・米国)。以前ご紹介した「クトゥルフ神話」の創始者として有名ですね。

 続いて8月22日は、幸田露伴さん(1867年)。こちらも以前ご紹介した「五重塔」の作者として知られています。

 また、同じ日にレイ・ブラッドベリさん(1920年・米国)。代表作の一つ「華氏451度」は、本を読んだり所持したりすることが禁じられた世界のお話で、タイトルは紙の燃え上がる温度を意味しているんですよ。

 8月23日は、デザイナーで児童文学も手がけるディック・ブルーナさん(1927年・オランダ)。可愛いうさぎ「ナインチェ・プラウス」の生みの親です。英語読みで「ミッフィー」といえば皆さんご存じですよね。

 最後に8月25日は、ミステリーの女王、山村美紗さん(1934年)。多くの作品がドラマ化され、「山村美紗サスペンス」と呼ばれる一大ジャンルを築きあげました。

 ではここで、朗読倶楽部のお話……最後の大会前のお話、第10回です。

 小口のどかさんが所属する文芸部朗読サークルとの交流戦がいよいよ始まろうとしたそのとき、彼女の提案でお互いが持参していた朗読用の本をそれぞれ相手校の本と取り換えることになってしまいました。

 せっかく今まで練習してきて大会本番でも使う予定の本が手元からなくなり、不安に駆られる私たち朗読倶楽部。私の手元にやって来た本は小口さんの用意していたもので、芥川龍之介さんの全集から短編「あばばばば」でした。

 変わったタイトルで私も興味深く読んだことはあるものの、朗読は一度もしたことのない作品です。ちなみにみかえさんは知っているけれど読んだことがない本、部長さんに至っては全く知らない本とのこと。これでまともに試合ができるのかと、私たちの不安が頂点に達しようとしたその時、

 「相手も同じ条件なんだから、恐れることはない」

 との先生の言葉に、はっとさせられました。

 朗読する本を交換したのは相手も同じ……そんな当然のことに頭が巡らなかったのは、「相手」のことを考える余裕がなくなっていた証拠です。この時、先生の言葉で何かをつかめた気がしました。

 そして、「ぶっつけ本番」な朗読勝負は始まったのです……と、いうところで、今回はここまでです。次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 三上延「ビブリア古書堂の事件手帖」

 こんにちは、今回ご紹介する一冊は古書に隠された人生を読み解く物語、三上延(みかみ・えん)さんの「ビブリア古書堂の事件手帖」です。

 「古い本には中身としての物語だけではなく、本そのものの物語がある」

 ……という魅力的なテーマを元に、本にまつわる秘められた謎を解き明かしていくこのお話は、2011年に発表されました。

 内定していた会社が大学卒業直前に倒産し、就職浪人になってしまった五浦大輔(ごうら・だいすけ) さん。彼は昔から本を読むことが苦手でした。といっても、単に本が嫌いというわけではありません。活字を見続けていると、気分が悪くなってしまう体質なのです。

 原因ははっきりしませんが、本が好きだった幼少の時期、祖母が大事にしている夏目漱石の本を黙って読もうとして、「もう一度同じことをやったら、うちの子じゃなくなるからね」と、言われるほど激しく叱られたことが関係しているように思えました。

 その祖母も昨年亡くなり、遺品を整理していた母親から本の価値を調べてほしいと頼まれた大輔さん。それは「夏目漱石全集」であり、あの日以来決して触れることのなかった問題の本……「漱石全集第8巻 それから」も含まれていたのです。

 本の中に挟まっていた「ビブリア古書堂」の値札を見つけ、大輔さんの脳裏にもうひとつの思い出がよみがえりました。まだ高校生だったある日、たまたま通りかかったビブリア古書堂で見かけた、店員らしき女性の姿を……。

 大輔さんと共にお話の中心となるビブリア古書堂の店長・篠川栞子(しのかわしおりこ)さんは、第1巻ではとある事情で入院しているため、「安楽椅子探偵」の要素も強い本作品。

 皆さんもこのお話を読んで、自分の本棚に置かれたお気に入りの本にまつわる話を思い出してみてはいかがでしょうか?(^−^)

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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