俳優の渡哲也さんが日中国交正常化40周年を記念したTBSの「強行帰国~忘れ去られた花嫁たち~」で、報道ドラマ初主演を務めることが29日、明らかになった。番組は、93年9月、12人の中国残留婦人が日本への永住帰国を求めて帰国を強行し、成田空港に籠城(ろうじょう)した事件を取り上げており、渡さんは「このような意義深い番組に参加できて光栄です。残留婦人の皆さんの壮絶な人生を思うと、気が引き締まる思いです」と、コメントを寄せている。
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同番組は、TBS報道局が昭和史の知られざる秘話をドラマとドキュメンタリーを融合させて描くシリーズの5弾目。日中国交の歴史で、ひとつの転換点となった同事件の裏舞台を描く。残留婦人とは、戦前に「大陸の花嫁」と呼ばれ、国策によって満蒙開拓団に嫁いだ女性たちで、戦争で夫や家族を亡くし、生き延びるために中国人と結婚し、日本への永住帰国を望んだが、日中国交正常化後20年以上も、身元引受人がないなどの理由で、祖国に戻り暮らすことができなかった。しかしその状況の中、12人は「強行帰国」を敢行して成田空港のサテライトに立てこもり、時の日本政府に直訴した。
番組では、残留婦人たちの帰国に至るまでのストーリーをドラマで再現。渡さんが演じるのは、かつて中国戦線でスパイ活動をしていた男・国友忠で、倍賞美津子さん演じる残留婦人のリーダー・竹越リエとともに裏で「強行帰国」を立案した人物。戦後に残留婦人の存在を知り、その救済のために私財と生活のすべてをかけた。渡さんは「国友忠さんのことは初めて知りましたが、私財を投げ打って残留婦人のために尽力したその功績に恥じないよう、精いっぱい演じたい」と熱を込めた。
ドキュメンタリーでは、「大陸の花嫁」がいかにして生まれたか、そして敗戦、文化大革命、日中国交正常化の中で、日中二つの国家にどう翻弄(ほんろう)され、どのような過酷な運命を生きてきたかを当事者のインタビュー、旧満州(現中国東北部)での取材、残された貴重な映像から描き出す。さらに、日本政府が残留婦人たちを受け入れるに至った経緯を、当時の日本政府関係者の取材で明らかにする。藤原康延プロデューサーは、「この番組をきっかけに、さまざまな角度から日中関係を捉え、今後を考えていく材料を幅広く視聴者の皆様に提供できれば」と語っている。番組は10月1日午後9時放送。(毎日新聞デジタル)
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