注目映画紹介:「コッホ先生と僕らの革命」ドイツの教育にサッカーを持ち込んだ教師の実話

(C)2011 DEUTSCHFILM/CUCKOO CLOCK ENTERTAINMENT/SENATOR FILM PRODUKTION
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 サッカー強国ドイツにこんな歴史があったなんて知らなかった。19世紀後半、帝国主義下のドイツの学校に初の英語教師が赴任し、授業にサッカーを取り入れて真の教育を行った実話を基にしたヒューマン作「コッホ先生と僕らの革命」が公開中だ。主演は「グッバイ、レーニン!」(03年)などで知られるスペイン出身の俳優ダニエル・ブリュールさん。

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 19世紀後半のドイツの地方都市に、英オックスフォードに留学していた若い教師コンラート・コッホ先生(ブリュールさん)が赴任してくる。のちに「ドイツ・サッカーの父」と呼ばれる人物だ。生徒たちは教師から秩序と規律と服従を重んじるドイツ流の教育をたたきこまれ、英国に対して反感と偏見を持っていた。クラスの雰囲気も悪く、上流階級の級長が率いるグループが、労働者階級の生徒をいじめていた。コッホ先生はサッカーをしながら英語を教えるという授業を始めた……という展開。

 先生が教育現場の方針に反して自分の考えを貫けば、今でさえおそらく周囲の先生から浮くと思われる。ドイツで体育といえば「体操」だった時代。反社会的とされていたサッカーを授業に持ち込んだコッホ先生に焦点を当てた。コッホ先生を英語の教師にしたのは映画化の際の脚色らしいが、それが功を奏した。ボールをけることで子どもたちの心が解放されていく過程と、偏見をなくして自由と平等の目を養おうとした先生の教育哲学がサッカーと英語教育とにリンクし、感動を生んだ。子どもたちが仲間を思いやる気持ちを育んでいくさまが素直に描かれ、見終わったあとにさわやかさが残る。差別やいじめは大人の心にあるもので、子どものうちならまだ間に合う。「強い者は怖いし、なかなか逆らえないが、自分を責めずに服従するな」という劇中のコッホ先生のメッセージを、今いじめ問題で揺れている日本の10代にもぜひ伝えたい。TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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