話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、名門の御曹司ながら実力のない歌舞伎俳優・恭之助と、歌舞伎と無縁の家に生まれながら実力で成り上がろうとする歌舞伎俳優・一弥、歌舞伎好きの女子高生あやめの青春を描いた嶋木あこさんのマンガ「ぴんとこな」(小学館)です。月刊マンガ誌「Cheese(チーズ)!」編集部の小菅さやかさんに作品の魅力を聞きました。
ウナギノボリ
解説:朝ドラ“メガネっ娘”の系譜 過去にもブレークした俳優が
−−この作品の魅力は?
「ぴんとこな」とは、「男らしく芯のある二枚目」という意味の歌舞伎用語です。この作品は歌舞伎の世界を舞台に、性格も境遇も全く違う2人の青年が、切磋琢磨(せっさたくま)しながら、役者としても、人間としても「ぴんとこな」になってゆく青春ストーリーです。
作品の魅力は大きく分けて二つ。一つは嶋木あこ先生が描く、ため息の出るような美しいイラストです。もう一つは、梨園という特殊な世界ゆえに起きる登場人物たちの葛藤(かっとう)や人間模様です。家柄が重要視される梨園において、歌舞伎の名門の家に生まれながら、やる気も実力もない恭之助と、一般家庭出身ながらも実力のみで成り上がろうとする一弥の、互いが持つ悩みや羨望(せんぼう)は、対照的かつとても人間くさくて、読んでてぐいぐい引き込まれてしまうこと間違いなしです!
−−作品が生まれたきっかけは?
先述したとおり、嶋木先生の美しいイラスト、その画力にはいつも感嘆させられます。初代の担当者は、その嶋木先生の素晴らしい武器を最大限生かせる題材を描いていただきたい、という発想のもと「歌舞伎」という艶(つや)やかな舞台を提案したそうです。舞台シーンで、役者の気迫、華、オーラなどを一枚のイラストでバシッと見せつけられたときのしびれるような感覚は、嶋木先生だからこそ表現できるものだと思います。
−−編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。
第5巻17話「三人吉三」の舞台シーンの回のことです。「ぴんとこな」の人気がぐいぐい上がってきたこともあり、いつもの倍の81ページで、という無理なお願いをさせていただきました。ギリギリの進行の中、やっとのことで出来上がったネームを拝見したとき、面白い……けど……、何かほんの少し物足りない……、と思いました。でも、これ以上ネームに時間を割いていただいたら落ちるかも……、と弱気になっていた私の心を見透かしてか、なんと嶋木先生はたった半日でネームを描き直して来てくださったのです!
そのネームの面白いこと! ぞわぞわと体中に感動が広がりました。嶋木先生にほれた、そして弱気になった自分を反省したエピソードです。
−−今後の展開、読者へ一言お願いします。
一見とっつきにくい歌舞伎を題材にした作品ですが、堅苦しさとは無縁の作品です。伝統芸能の世界に身を置いてはいますが、登場人物たちの悩みや成長、青春は等身大の17歳の若者となんら変わりません。2人の役者が成長するさまは読む人の「私も頑張ろう」という気持ちを後押しすること請け合いです。2人の役者の対立しつつも高めあう、そんな関係にもキュンとしてください! また、11月26日には最新刊8巻が発売予定です。ご期待ください!
Cheese!編集部 小菅さやか
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