20~23日に開かれた国内最大のゲームの展示会「東京ゲームショウ(TGS)2012」。スマートフォンなどで遊ぶソーシャルゲームが増えて、過去最高の22万3700人が訪れるなどの光明もあった。高収益のソーシャルゲームがもたらす影も浮かび上がった。(毎日新聞デジタル)
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TGSは、毎秋開催される世界的なテレビゲーム展示会の一つで、今年で22回目。前年から16社増の209社が出展し、「モンスターハンター4」や「バイオハザード6」「龍が如く5」などの人気タイトルがそろった。スマートフォン向けの出展タイトル数が前年比約2.5倍、タブレット端末は3倍に増え、ゲームの広がりを見せた。
さらに今回は、TGSの来場者数が最高記録を更新した。一般公開日初日の3日目には、1日あたりの過去最高の約8万6000人を大きく超える約9万5000人を記録。過去のTGSで記録更新が期待できたのは、新型ゲーム機の大規模なお披露目の年のみだった。来場者増加のカギは、現地で配布されたソーシャルゲームのカードにある。
ソーシャルゲームは、携帯電話とスマートフォンを使い、他のユーザーとのコミュニケーションを取りながら遊ぶゲームだ。既存のテレビゲームと違って無料で遊べる一方、ゲームを快適・有利に進める一部のアイテムが有料という仕掛け。爆発的な人気を博し、昨年のゲーム会社の売上高と利益増に貢献した。昨年、プロ野球球団の横浜ベイスターズを買収して話題になったDeNAもこのソーシャルゲームを展開する大手企業だ。
TGSの会場では、各社がカードを配布した。このカードには番号が書かれており、その番号を該当のソーシャルゲームに入力すると、貴重なアイテムが手に入る。コナミのブースでは、人気のソーシャルゲーム「ドラゴンコレクション」や「戦国コレクション」の会場カードを配布。会場と同時に多くの人が交換に必要な整理券を求めて同社のブースを訪れるなど人気だった。
「新型ゲーム機が来場者を増やす」という定説は破られたことから、来年以降もソーシャルゲームのカード配布の方法が加速するのは確実だ。ある関係者は「ソーシャルゲームがなければ、こうした集客方法は考えつかなかっただろう」と話している。
ソーシャルゲームのおかげで光明が見えたTGSだが、新たな課題も出ている。ソーシャルゲームがもたらした成長が、意外な形でテレビゲームに影響している。ゲーム会社アルケミスト(東京都江東区)の浦野重信社長は「多くのメーカーが利益の高いソーシャルゲームの開発に注力して、(高収益が見込めない)低年齢向けのゲームの開発を避けるようになった。将来のゲームファンを増やすのも大事と思うのですが……」と顔を曇らせる。
実際にゲームショウには子供たち限定で遊べる「ファミリーブース」を設けており、ここ4年で最高の約2万2000人が訪れたが、会場に用意されたスペースや体験台の数は明らかに減った。新規層の取り込みはゲーム業界の課題で、今年に発行された業界団体コンピュータエンターテインメント協会の「CESAゲーム白書」によると、昨年の国内ゲーム会社の総出荷額は約1兆4500億円とピーク時の07年から半減している。DSで得た「脳トレ」ブームの好機を業界でつかめなかったのが低迷の原因だ。
そしてゲーム会社を救った低開発費・高利益のソーシャルゲームにも課題はある。携帯電話から高性能のスマートフォンに変わることで、開発費が上がり始めている。CGの高画質化で開発費増に苦しんだかつてテレビゲームと同じ方向に進んでいる。
こうした問題を解決して、ゲーム産業は再び成長路線に乗せられるか。来年のTGSでどんなゲームに人気が集まるのか、注目だ。