永山絢斗さんと田畑智子さんがダブル主演を務めた「ふがいない僕は空を見た」(タナダユキ監督作)が17日に全国で公開された。「第24回山本周五郎賞」を受賞した窪美澄の小説が原作で、アニメの同人誌販売イベントで偶然知り合った高校生男子・卓巳(永山さん)と主婦のあんずこと里美(田畑さん)の恋愛を軸に妊娠、出産という視点から「性」と「生」を繊細に描き出している。監督は「百万円と苦虫女」(08年)などで知られるタナダユキさん。あんず(里美)役の田畑智子さんに話を聞いた。(上村恭子/毎日新聞デジタル)
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−−里美は同人誌イベントで「あんず」と名乗る主婦。男子高生とコスプレ姿で逢瀬(おうせ)を重ねている裏で、夫や体外受精を強要する姑(しゅうとめ)との関係に悩んでいます。どのように役作りをしていきましたか?
役を作っていこうというより、いつもそうなのですが、彼女の人生を生きていこうと思いました。どういうところで生まれて、家族構成は、日常ではどんなことをしているのか……。一人の女性として、同じような思いをしている方々もいらっしゃると思いましたし、私自身、自分の身に起こりうる問題かもしれない。女性として考えなければならないことがいっぱいありました。
−−弱さの中でもがく難しい役だったと思います。
私の人生の中で未経験で分からないこともいっぱいありました。でも、現場に入ると、生身の人間がそこでお芝居している。現場に身を置いたとたん、あんずが何を感じているのかがつかめて、体感できました。
あんず(里美)が不妊治療に臨むシーンでは、本物の先生(医師)が不妊治療について説明してくださっています。撮影中、本気で泣けてきました。説明を聞いただけで体の奥から痛さを感じて、苦しいと思いました。「私ってなんなのだろう」と思ってしまいました。採血のシーンも本物の看護師さんがやっています。「もう血を採っちゃってください!」と私からいって本当に採血しているからリアルですよ(笑い)。
−−永山さんとは大胆なラブシーンもありました。必死に存在しようとしているあんずの心境も伝わってくる美しくも切ないシーンでしたが、タナダ監督や永山さんとどう話し合ったのですか?
タナダ監督と永山さんとはそんなに話し合わずに撮影に臨みました。現場に入ると空気が作られていたので、あんずとしてそのシーンを楽しもうと思いました。きっとあんずは、そのとき幸せな2人でいたかったと思ったからです。コスプレをすることで現実から離れて、違う世界にいくことを心から楽しんでいた。2人はすごく幸せなんだ、温かいんだと思いながら臨みました。
−−17日に映画は公開されましたが、どんなところを見てもらいたいですか。
「性」と「生」って言葉にすると難しい。人によってそれぞれの感じ方があるので、この映画を見ることによって、自分の思いを感じてもらえたらいいですね。私は、改めて生まれてくることに感謝すべきだという思いになりました。
−−女優としてのこれからの目標、やりたいことを教えてください。
とにかく、今は経験を積みたいです。いろいろなことを見て、聞いて、知って、自分を大きく、ぶ厚くしていきたいです。30代になって、20代のときと考え方も変わってきている。これから先、もっと変わっていくかもしれない。いろいろなことに挑戦して、もっともっと大きく成長していきたいです。
<プロフィル>
1980年生まれ、京都府出身。92年、映画「お引越し」でデビュー。その後、映画「血と骨」(04年)、「隠し剣、鬼の爪」(04年)、「花よりもなほ」(06年)、「アフタースクール」(08年)、「さんかく」(10年)などに出演。これまでにハマったマンガやアニメ、映画などのポップカルチャーは「名探偵コナン」。「(テレビアニメを)初回からずっと見ています。(コナン役の)声優の高山みなみさんが大好きなんです。コナンはコミックスも持っています。それから、私の理想の男性はルパン三世です(笑い)」と話した。
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