ITAN:マンガ界の“異端児”、隔月刊化で勝負

話題のマンガ誌「ITAN(イタン)」の魅力を語る編集長の岩間秀和さん
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話題のマンガ誌「ITAN(イタン)」の魅力を語る編集長の岩間秀和さん

 創刊2年目にもかかわらず、ランキング本「このマンガがすごい!」のトップ5に2作品が選出されて話題を集めた女性向けマンガ誌「ITAN(イタン)」(講談社)。落語からSFまで文字通り“異端”の作品群を引っさげ、昨年12月には季刊誌から隔月刊誌へと刊行ペースを早めるなど、雑誌不況が叫ばれる中、新しい動きをみせている。

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 「ITAN」は“世界のはじっこを描き出す”をうたった女性向けの季刊マンガ誌として10年に創刊。創刊前の09年には動画投稿サイトのピクシブと協力して「スーパーキャラクターコミック大賞」を創設し、雑誌名の「ITAN」もネット投票で決めるなど、これまでにない試みで話題を呼んだ。

 日本雑誌協会の調べによると、女性向けマンガ誌16誌のうち、14誌が印刷部数で前年割れするなど、苦戦が続くマンガ誌の状況は、熱心なファンが多いとされる女性向けでも変わらない。編集長の岩間秀和さんは、「少年マンガ誌でも女性をターゲットにしたものが人気を集めるなど、女性の好みも多様化してきている」と分析する。そんな女性たちの心をとらえるため、あえて「王道」ではない「異端」の作品を集めたマンガ誌を作ろうと考えたという。

 かつて新しいマンガ雑誌の創刊に関わるも、あえなく休刊になってしまった苦い経験を持つ岩間さん。半年足らずで創刊した当時を「あせりがあった」と振り返り、「ITAN」では創刊前の準備に心を砕いた。

 どうせ新しいものを作るなら、講談社の雑誌で書いたことのないマンガ家に声をかけようと考えたという岩間さん。編集者が個人的に好きなマンガ家にオファーして執筆陣を決めていったといい、結果的にSFから落語まで「多国籍軍」といえるほどさまざまなジャンルの作品がそろった。編集者もマンガ家との対話を繰り返し、ストーリーをじっくり練り込んだ。一方、ピクシブでの募集や同人誌即売会「コミティア」に出張編集部を設置して持ち込みを受け付けるなど、新人の発掘にも力を入れたという。

 こうして2年以上の入念な準備をかけて創刊された「ITAN」は、20代女性を中心に熱心なマンガ好きにまでファンを増やしていった。また、11年には、ストイックな大名人と押しかけ弟子の生きざまを描いた雲田はるこさんの「昭和元禄 落語心中」が、ランキング本「このマンガがすごい!」(宝島社)のオンナ編で2位を獲得。「スーパーキャラクターコミック大賞」を受賞した田中相さんの短編集「地上はポケットの中の庭」も5位に入り、創刊2年目でトップ5中2作品を占めるという快挙を成し遂げた。また、ランクインを受けてコミックスも増刷を重ね、「昭和元禄 落語心中」は3巻で38万部というヒットを記録している。

 「新人作家も含め、どの作家も作品としての斬新さだけでなく、世界観まで濃密に描いている」と岩間さんが語るように、年4回の季刊誌という刊行形態も手伝って、作品はいずれも心理描写や描き込みなどが細かい部分まで心が配られている。こうした丁寧な作りがマンガ好きの支持を集めた。

 一方、続きが読めるのが3カ月後ということに加え、コミックスの出版ペースも年1冊程度ということから、刊行ペースを上げてほしいというファンの要望も強くなっており、今回の隔月刊化に踏み切った。岩間さんは「ペースは上がるが、作品の濃度は保てる」と語る。そこには好きなマンガ家と一緒に作品を作り上げているという自信がうかがえる。

 岩間さんは「他の雑誌で書けないような作品を書いてもらっている。“世界のはじっこ”から、どこまで高みに上れるか勝負したい」と力を込める。マンガ界の“異端児”の快進撃にこれからも注目だ。(毎日新聞デジタル)

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