朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第104回 楠山正雄「文福茶がま」

「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん
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「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに100万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第104回は楠山正雄の「文福茶がま」だ。

ウナギノボリ

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 2月に入り、受験シーズン真っただ中。電車やバスの中でも参考書や教科書を熱心に読んでいる方を目にします。これからの日程が本番という方はもちろんですが、すでに本命を受験したけれど他にも受けておきたいという方も、気の抜けない時期ですよね。

 寝る前は復習の時間にあてると勉強したことを記憶しやすいほか、試験の当日は早起きして完全に脳が目覚めるための時間を作ると、実力を発揮しやすいそうですよ。

 それではここでお誕生日コーナー、今回は3人の作家さんをご紹介させていただきます。

 まず1月27日はルイス・キャロルさん(1832年生まれ・イギリス)。「不思議の国のアリス」そしてその続編となる「鏡の国のアリス」は皆さんよくご存じですよね。本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンさん……詩人、作家であると同時に学者さんでもあり、本名では数学や論理学の本も発表されています。

 翌28日は、小松左京さん(1931年生まれ)。以前ご紹介させていただいた星新一さん・筒井康隆さんに並んで、「日本SF作家の御三家」と呼ばれる方です。「復活の日」「日本沈没」「首都消失」など多くの作品が映像化されたほか、SFだけにとどまらない多岐にわたるジャンルの作品を「SF作家の視点」から発表し続けました。

 そして2月2日は、ジェイムズ・ジョイスさん(1882年生まれ・アイルランド)。1922年に発表された「ユリシーズ」は世界的に有名な一冊で、イギリス文学の歴史を語る上で欠かせない方だと言われています。フランスのマルセル・プルーストさん、チェコのフランツ・カフカさんと並び、20世紀前半の文学を代表する作家さんなんです。

 では続いて、朗読倶楽部のお話……朗読倶楽部顧問・癸生川新先生のこと・第2回です。

 時折何かに疲れたような、寂しい表情を見せる先生……その秘密を知ることになったのは、出張朗読倶楽部「朗読館」に舞い込んだある依頼がきっかけでした。

 「商店街で使う録音宣伝放送のアナウンスを担当してほしい」

 商店街から通うある生徒さんの依頼に最も興味を示したのは、声優を目指している部長さん。朗読館での実績を積み上げたいという意図もあって、この依頼は即引き受けることになったのです……と、そこまではよかったのですが……実はこの依頼、一つ大きな問題がありました。それは、録音場所の確保です。

 初めは練習の時に自分の朗読を録音するような気軽さで、部室などの手ごろな場所で収録すれば……そう考えていたのですが、いざやってみると周囲のノイズをかなり拾ってしまうのです。練習を聞くのは自分たちだけなので気にしていなかったことですが、商店街から大音量で流されるとなればやはり勝手が違います。

 そこで私たちは「録音場所」を探すことになるのですが……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

 ◇しおりの本の小道 楠山正雄「文福茶がま」

 こんにちは、今回ご紹介するのは前回の「きつね」に続き今度は「たぬき」のお話、楠山正雄さんの「文福茶がま」です。

 「分福茶釜」とも表記される日本のおとぎ話をもとに楠山正雄さんが再話したこのお話は、楠山さんの代表作のひとつ「日本童話宝玉集・下巻」(1922年発表)において「十大昔話」のひとつとして紹介されているんですよ。

 「茶がま」とは文字通り「お茶」をたてる湯を沸かすための「お釜」です。茶道をたしなまれている方はよくご存じですよね。その茶がまが題名に冠せられたこのお話、果たしてどんな内容なのでしょうか……?

 むかしむかし、上野国館林(こうずけのくに・たてばやし)に茂林寺(もりんじ)というお寺がありました。ここの和尚さんは茶の湯が趣味でさまざまな道具を集めていたのですが、中でも最近買った茶がまは特にお気に入りで、みんなに見せては自慢していたものです。

 ある晩、和尚さんが茶がまを前にうとうとしていると、なんと茶がまがひとりでに動き出し、あまつさえ頭やしっぽに4本の足まで生えてきたではありませんか。

 この様子を目にした小坊主さんたちは慌てて和尚さんに訴えますが、そこにあるのは元の姿に戻ったただの茶がまだけでした。和尚さんに怒られながらも首をかしげる小坊主さんたち。

 ところがあくる日のこと、「眺めるばかりでなく使ってみよう」と思い立った和尚さんが、茶がまでお湯を沸かそうとしたところ……。

 このお話に登場する上野国館林は現在の群馬県館林市にあたり、茂林寺というお寺も実在しています。しかもなんと「分福茶釜」が、ご本堂の傍らに今も安置されているんですよ。

 でも、「文福茶がま」が茂林寺から伝わったお話なのは確かなようですが、お寺に伝わる言い伝えはおとぎ話と異なっていて、いくらくんでも湯が尽きない茶がまと言われているんだとか。

 この不思議な伝説がある茶がま、本当に手足が生えてくるのか、あるいは湯があふれ出てくるのか……確かめに行ってみるのも面白いかもしれませんね。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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