マンガ質問状:「琴浦さん」 人気爆発で社内パニック アニメの改変に作者も喜び

えのきづさんの「琴浦さん」5巻のカバー
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えのきづさんの「琴浦さん」5巻のカバー

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、テレビアニメ化されたえのきづさんの4コママンガ「琴浦さん」です。マイクロマガジン社マンガごっちゃ編集部の関戸公人さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 他人の心が読めてしまう少女、琴浦春香。彼女の読心能力は自分で制御できず、他人の心の声を遮断できません。そのために幼いころからつらい体験をし自分を閉ざしてしまいますが、エロスで実直な少年、真鍋義久と出会うことにより、彼女は大きく変化していきます。

 いい先輩を演じつつも、心の底では春香を利用しようと考えている先輩や、しっと心から大問題を引き起こす同級生など、ほかの登場人物もくせがあり、4コマコミックとしては珍しく重い展開やつらいシーンも存在します。半面、登場人物の可愛い仕草や底抜けに明るいギャグシーンもあり、涙と笑い、明暗の大きな振り幅が魅力です。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 もともとは、えのきづ先生が自分のサイトに趣味で掲載していたウェブマンガで、私もそこから作品に入りました。でてくる女の子にみんな影があって、超能力を題材にしているのに、そういうところでの人間味がすごいな、と非常に魅力を感じました。

 先生が同人誌即売会に参加するということでしたので、会場で声をかけさせていただきました。作品に心底ほれ込んでいたこともあり、初めての打ち合わせで「いずれアニメにしたいんです!」って先生にぶちまけて、引かれました。ただ、マンガだけの展開では終わらせたくないという気持ちが強かったので、少しでも話題性をだそうと、1巻の限定版にフィギュアを付けたりしましたが……今考えるとむちゃしていた気がします。

 −−編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。

 明るい話だと思ったら急に重いパンチが飛んでくる作品なので、読者にもノーガードで受けてほしいと考えて、表紙は、たくさん描いていただいたラフの中で最も作品の内容が想像できないものを選びました。デザインもシンプルにしたので、営業サイドからは「内容が伝わりにくいんじゃないか」とか「作風を反映した表紙ではない」と反発もあったのですが「それがいいんです」と半ば無理やりに通したのが印象的です。正直なところ読者からの反発も心配していたのですが、ほとんどが「だまされた」ではなく「やられました」という意見が多くて、結果的に作品を気に入っていただけたのがうれしかったです。

 えのきづ先生に関しては執筆も速く、締め切りもきっちり守っていただいているので、本当に頭が上がりません。あえて大変だったことをあげさせていただくと、作品が「マンガごっちゃ」での連載に移ってからは、ストーリー構成や、展開についての打ち合わせを行うようになったのですが、先生は描いているうちにキャラクターが動き出して物語を進めていく……という感じで執筆されるタイプなので、「この後、どうなるんですか?」って聞いても、「さあ、どうなるんでしょう」みたいな返答なので、とても困ります。結局ざっくりとした部分しか決めないので、うまくたためるのかな……ってドキドキしながら原稿を待ってます。今も。

 −−アニメ化された後の反響を教えてください。

 反響はもちろん想定していたんですが、想定以上というのが本音です。アニメ化を見込んで在庫は残していたんですが、アニメ放映後、一瞬でなくなってしまいました。増刷を急ぎでかけたのですが、それができ上がってくる前に増刷以上の注文が押し寄せてさらに増刷をして……と1カ月くらい社内がパニック状態でした。と、同時にアニメとともに原作も同時に楽しんでいただいている方の声があちこちで見られて、作品をいろいろな角度で見ていただける方がたくさんいることにとても感動しました。

 また、アニメでは原作の第3部にあたる「事件編」のラストを大幅に変更していまして、それはアニメスタッフからの提案だったのですが、アニメでの「12話内での春香の成長物語」を形成する上で必要だと感じ、「原作ストーリーは全く考えずに組み立ててください」とお話ししました。アニメ版は実は、えのきづ先生自身が最初に考えていたストーリーに近く、原作では続刊での展開などを考慮した上でアニメとは違ったラストにしていたのですが、先生としても真鍋のエロスや春香の過去や森谷の救済、先述の事件のことなど、自分ができなかったことをいい形で仕上げてくれると改変部分については非常に喜んでいました。

 −−今後の展開は?

 アニメは12話でいったんおしまいですが、原作コミックはもうちょっとだけ続きます。春香の妹、絢香(あやか)ちゃんも登場します。妹はよく動くので、えのきづ先生も私もとても気に入っています。もちろん「琴浦さん」らしいハードな展開もあって、アニメではほとんど触れられなかった春香の父が出てきたり、春香を狙う新キャラも登場したりします。でも、最後はちゃんとハッピーになる予定です。原作では、少しクールだったのに、最近は完全にアニメに引っ張られてエロバカっぽさが増してしまった真鍋や成長した春香がきっとなんとかしてくれるはずです。

 −−読者へ一言お願いします。

 2月に4巻が発売されたばかりですが、5月には5巻が出ます。通常版は5月31日で、ドラマCDが付いた限定版を1週間早い5月24日に発売する予定です。ドラマCDには2本のストーリーが入っており、アニメ脚本を手がけられたあおしまたかしさんの書き下ろしとなっています。アニメと同じBGMで、声優さんも同じキャストです。総尺約60分の超大ボリュームにえのきづ先生の描き下ろし小冊子もお付けして、お値段なんとなんとの2100円。ドラマCDなしのコミック本体が840円なので、とんでもなくお買い得です。アニメを応援していただいた皆さまへの感謝価格と考えていただいて、ぶっちゃけ完売しないと、ちっとも利益がでない勢いなので、書店やネット通販での事前ご予約のほど何とぞよろしくお願いします。

 マイクロマガジン社 マンガごっちゃ編集部 関戸公人

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