マンガ質問状:「センゴク」 学者や研究者のファン多数、戦国マンガの決定版

宮下英樹さんの「センゴク一統記」1巻
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宮下英樹さんの「センゴク一統記」1巻

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、宮下英樹さんの「センゴク」シリーズです。講談社「ヤングマガジン」編集部の細谷祐介さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 魅力的な武将たちと、臨場感あふれる合戦シーンが最大の魅力ですね。真正面から乱世を描いた、戦国マンガの決定版です! 

 また、“本格”を好む歴史ファンをもうならせる、歴史の真実に迫った描写も、この作品にしかない大きな魅力です(ありがたいことに、学者さんや研究者さんたちのファンも多くいらっしゃいます)。もちろんマンガ的な誇張は大いにありますが、「もしかしたら本当にありえたかも」と思えるギリギリのラインは守っていて、それがかえってロマンを大きく膨らましているんじゃないでしょうか。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 宮下さんと初代担当とが企画を出し合った際に、共通して挙がったのが歴史ものだったと聞いています。もっとも、お互いの「第3希望」だったらしいですが(笑い)。そこから取材を重ねていくうちに、どんどん興味が深まっていったそうです。

 それまで、宮下さんは「歴史マンガはベテランのもの。だから自分も年をとってから描こう」と考えていたのですが、逆に「若い描き手による戦国ものは、それだけで違う切り口の作品になるんじゃないか」という思いがわいたそうです。

 −−斬新な視点の歴史観が人気ですが、どこから思いつくのですか?

 膨大な史料や古戦場での取材から集めた「小さな事実」を積み重ね、その上でマンガにしかできない「大胆な想像」を作り上げるというのが宮下さんの作劇法です。毎週の打ち合わせでも、まずは史料や論文をうのみにせず、確かなものだけを拾い出し、そこからマンガとして盛り上げる方法を考えます。最初に史実そのものを疑ってかかることで、新しい発想が生まれるという面はあると思いますね。

 −−編集者として作品を担当して、大変なことを教えてください。

 担当者よりも読者のほうが圧倒的に歴史に詳しいこと、でしょうか……。本格的に歴史好きな方って、本当にすごいんですよ。地方で個人的に郷土史を研究されている方や、古文書を読んで解説するサイトを運営されている方など、歴史に対する見識では先人にとてもかないません。……致命的な間違いだけはしないよう、とにかく勉強の日々です。

 −−今後の展開は?

 当面は歴史の流れを追いながら、乱世の終焉(しゅうえん)までを描いていくことになると思います。また、主人公・仙石秀久の物語は、実はここからが本番です!(史料的にも、このあたりからやっと歴史の表舞台に名前が登場し始めるので)

 この先、秀吉のもとで順調に出世していく仙石ですが、「戸次川の合戦」で人生最大の失敗を経験し、そして「小田原攻め」で奇跡の挽回を遂げるという、びっくりするくらいドラマチックな人生が彼を待っています。

 −−読者へ一言お願いします。

 とにかく長く読み継がれる作品にしたいと願っています。今現在は歴史に興味のない人だって、ある日突然歴史に興味がわくものなんです!(実は宮下さんも私もそうでしたから)

 だから、十年後でも二十年後でも、ふと「歴史を知りたい」と思い立った人に「センゴクがあるよ!」と名前が挙がるような“定番”にしていきたいですね。

 最新刊「センゴク一統記」単行本3巻が4月5日に発売になりました!! 本能寺の変直前、この巻の主役は明智光秀。表紙はもちろん光秀ですが、今回は裏表紙の美麗イラストも注目ポイントです(実はこのイラスト、巨大なキャンバスに描かれているんです!)。

 ヤングマガジン編集部 細谷祐介

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