はじめの1巻:「地球戦争」 小原愼司が描くSF冒険マンガ ロンドンに火星人が襲来

小原愼司さんのマンガ「地球戦争」(小学館)1巻の表紙
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小原愼司さんのマンガ「地球戦争」(小学館)1巻の表紙

 1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「月刊!スピリッツ」(小学館)で連載、ロンドンに火星人が襲来する小原愼司さんのSF冒険マンガ「地球戦争」です。

ウナギノボリ

 大英帝国絶頂期のロンドンで、孤児院に暮らす少年オリバー。盗みやインチキな商売をしながら小銭を稼ぎ、将来自分の店を持とうとその金をこっそりとためていた。しかし、そのことが院長に知られて虐待を受け、床下に放り込まれる。意識が戻って外に出たオリバーが異変を感じて空を見上げると、3本足の巨大な物体が人間や馬車を吸い上げていた。

 ◇編集部からのメッセージ スピリッツ編集部 有井大志さん「人間のダークサイドに踏み込んだストーリー」

 アニメ化された「二十面相の娘」をはじめ、「菫(すみれ)画報」「パノラマデリュージョン」などで熱狂的なファンを持つ小原愼司先生の最新作です。

 「宇宙戦争」×「十五少年漂流記」!! さらには「銀河漂流バイファム」や「蝿の王」も……。古典娯楽作品の名作中の名作が、先生の筆を得て新たによみがえりました!!

 小原先生と打ち合わせをしていていつも感心するのは、ジャンルにとらわれないその圧倒的な読書量と教養。今作にもその成果はふんだんに生かされ、独特の温かみのある絵柄と相まって、「世界名作劇場」的な独特の世界観が構築されています。また、非常にリアルなロンドンの街並みは小原先生がご自分でコレクションした古写真や画集によるもの。こだわりの時代考証にも注目です。

 今後、物語は火星人対地球人という単純な構図を離れ、人間同士の思惑が複雑に入り組んだ新展開を迎えます。純粋な子供たちの間に生まれたささいな隙間(すきま)も、やがて取り返しのつかない深刻な対立に……!? 健全なだけでない、人間のダークサイドにもしっかりと踏み込んだストーリーにご期待ください。

 ◇書店員の推薦文 コミック高岡 市川祐治さん「とにかく読んでほしい」

 まずは絵柄の持つ雰囲気。SFに適合、はたまた適合してくれると申しましょうか、見ているだけで不思議な気分になります。また特筆すべきは随所に見られる見開きページ。ここまで恐ろしくワンダーに描かれている見開きはそうそうなかなかお目にかかれないと思います。

 ストーリーも原作の「大人」目線から「少年」の目線に移動したことでいろいろなものを見据えて話が展開。表紙の「THE WAR OF THE WORLDS」(二つの世界の戦い)ではなく「THE WAR OF THE HUMAM」という意味深な副題も争いがそれだけで済むはずがないと今から暗示しているのではないでしょうか? とにかく本当にこれからが楽しみな作品。はじめの1巻にふさわしい作品だと思います。

 小原愼司先生のマンガはとにかく読んでほしいです。私がいくら文章で書いてもその魅力を表しきれない作家さんの1人なので……。あと巻末のトニーたけざき先生との対談は必見、必読。裏話盛りだくさん。

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