及川光博:「八重の桜」木戸孝允役を語る 「逃げるが勝ちは僕と一緒」

=NHK提供
1 / 2
=NHK提供

 歌手の及川光博さんがNHK大河ドラマ「八重の桜」で、明治維新の立役者・木戸孝允(桂小五郎)を演じている。10年の「龍馬伝」では、木戸とともに「明治の三傑」とたたえられる薩摩藩の大久保利通を演じた及川さんだが、実は木戸が「具体的に歴史上どんなことを行い、どう生きたかということは案外知らなかった」という。そこで「『龍馬伝』で章ちゃん(谷原章介さん)が演じていたので、電話をしたんですけど留守電だった」と笑い話を交えつつも、木戸について勉強するうち「日本の未来や長州のことを考えて冷静に動いた冷静さ、知性に共感します」と語る及川さんに、役柄への思いや、今作に出演するミュージシャン仲間との共演、作品にちなんだ“ハンサムウーマン”像などについてを聞いた。(毎日新聞デジタル)

あなたにオススメ

 ドラマは、福島県出身で戊辰(ぼしん)戦争の落日、会津の鶴ケ城に500人の女たちと立てこもり、銃を持って戦ったことから“幕末のジャンヌ・ダルク”と呼ばれ、のちに同志社を創設した新島襄の妻となる八重(1845~1932)の生涯を描いた作品。八重役は女優の綾瀬はるかさんが演じている。

 ◇木戸の「仲間や政治への熱い思いを演じたい」

 京都守護職となった松平容保が藩主を務める八重の会津藩と対立する長州藩のリーダーを演じる及川さんは、「どの藩が京都守護職でも戦うことになっていたと思うし、それがたまたま会津藩だっただけだと思うんです。それは運命でしかないですね」と前置きし、「やはり会津に限らずどの藩でも仲間との絆ってあると思う。あの時代、西の人たちは討幕を合言葉にまとまっていた中で、木戸としては、何よりもまず長州復権を成し遂げたかったのではないかと思います」と力を込める。

 木戸像については「逃げて逃げて生き抜いた男」と評しつつも、「自分だけが助かるよう逃げているような印象もありますが、日本の未来や長州のことを考えて冷静に動いた人物。美学として散っていくこともわかるんですが、それだけじゃ時代は変わらないっていう冷静さ、その知性は好きですね」と共感を寄せる。また、自身とも「逃げるところは似ています。勝てそうにない戦いは僕も逃げます。ちゃんと準備して、負けない戦に出るタイプ」と“逃げるが勝ち”的な共通点を語る。

 ◇「蛤御門の変」「薩長同盟」のシーンが印象的

 及川さん演じる木戸は、改名前の桂小五郎として第8話から登場している。「僕が演じる場面は時代を動かす政治色の強いシーンが主で、感情的な部分は割愛されているので、それを埋めていく作業が難しいですね。出ずっぱりだったら、もう少し時の流れを出せるんでしょうけど、倒幕への熱い思いとか、そういったことはやっぱり想像で埋めていくしかないんですよね」と役作りの苦労を明かす。印象的なシーンに「蛤御門の戦い(禁門の変)」を挙げ、「決定的に倒幕への意識が芽生え、強くなったと自分でも思います。仲間を失い敗走する悔しさ、情けなさという思いを感じられる場面だったので、ずいぶんと演じる側のモチベーションも上がりましたね」と振り返る。

 また、その場面に続き、「薩長同盟のシーンも僕にとっては二つ目の大きなポイント」といい、「西郷(隆盛)さんと会って、薩長同盟を結んだときに『よーし、勝てる!』って感情移入ができました。相手のことを信じ切ってはいないと思うので、向き合ったときの緊張感とかも生まれるわけだし、演じていて面白かったですね」と明かす。

 ◇吉川&降谷との「時代劇でのセッションは楽しい」

 薩長同盟を結んだ相手であり、木戸と並んで「明治の三傑」と称されるのが、薩摩藩のリーダー・西郷隆盛。及川さんにとってはミュージシャン仲間である吉川晃司さんが演じており、その西郷像を「ふてぶてしい感じですね、褒め言葉として。強引なことを成立させてしまう押しの強さがあるなと思います。それから、とにかく、吉川さんは身長が高くて大きいんですよ」と圧倒的な存在感を感じているようだ。

 吉川さんとはプライベートでも「過去に一緒に飲んだこともあって、縁がある」という及川さんは、同じく今作に出演する降谷建志さんについても「降谷くんはデビューした頃に名古屋のラジオ局とか新幹線のホームで会ってたんですね。そのとき彼はまだ10代でね」と同様に“縁”を語る。そして、「音楽畑で出会っていても、こうやって大河ドラマで一緒に演じるのは不思議なものだと思いますね。待ち時間に『今レコーディングしてる』『来週からツアーですよ』とか、そんな話もできて楽しいですよ。俳優は演技を通してセッション感覚で楽しめますが、ミュージシャン同士って意外とセッションってあんまりしないんですね。そういう意味でギターを持って一緒に音を出したりしてないのに、時代劇という舞台でセッションしてるのは不思議でもあり、楽しくもありますね」と共演に新鮮な喜びを感じている。

 ◇ハンサムウーマンは「オンとオフがある人」

 今後、明治維新に向けて物語は一段と加速し、主人公・八重も木戸らがけん引する激動の時代に巻き込まれていく。及川さんは八重の魅力を「あの時代であの生き方っていうのは受け入れがたいものだっただろうなっていうのは想像しますが、現代の僕らから見たらカッコいい女性。例えるならば、『風の谷のナウシカ』的なね。すがすがしさ、潔さを感じますね」と語る。

 また、八重は“ハンサムウーマン”とも称されるが、自身が思うハンサムな女性は「オンとオフがある人。たとえば着飾ったり、異性からの“モテ”を意識したり、いろんな女性としての処世術ってあると思うんですけど、やっぱオフのある人のほうがカッコいいと思う。なぜならば、オンのときにもっとカッコいいから。それこそ綾瀬はるかちゃんが『ホタルノヒカリ』で演じた主人公じゃないけど、“干物女”ってアリだと思うんですよね。ちゃんとオンがあれば。そういった切り替えができて、現実から目を背けず自分の足で立つ女性はすてきだなと思いますね。だいたい男はオフのとき干物ですから(笑い)」と持論を展開していた。

 NHK大河ドラマ「八重の桜」はNHK総合テレビで毎週日曜午後8時から放送中。

写真を見る全 2 枚

テレビ 最新記事