注目映画紹介:「言の葉の庭」新海誠2年ぶり最新作 靴職人を目指す高校生と年上女性の恋物語

「言の葉の庭」の一場面 (C)Makoto Shinkai/CoMix Wave Films
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「言の葉の庭」の一場面 (C)Makoto Shinkai/CoMix Wave Films

 「秒速5センチメートル」「星を追う子ども」などの作品で多くのファンを持つアニメ作家・新海誠さんの約2年ぶりとなる最新作「言の葉の庭」が5月31日に公開された。靴職人を目指す高校生と人生につまずいた年上の女性の恋物語で、万葉集を基に、愛に至る以前の孤独……「孤悲」を描いている。繊細な背景、美しい雨の描写に息をのむ。46分の短編ながら濃密な時間が流れている。

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 高校生のタカオ(声・入野自由さん)は雨の日の朝は決まって学校をさぼり、日本庭園で靴のスケッチをしており、将来は靴職人になりたいと思っていた。ある日、缶ビールを飲む謎めいた年上の女性と出会う。やがて2人は雨の日に公園を訪れるようになる。その女性ユキノ(声・花澤香菜さん)は心に何かを抱えて込んでいるようだ。そんなユキノのために、再び歩き出せるよう、靴を作ることを約束するタカオだったが……という展開。

 この年の差恋愛物語は10代のころに見たかった。新海監督は、前作「星を追う子ども」では児童文学のような冒険を、今作では純文学のような物語を描いている。高校生男子の異性への憧れと、思春期の迷いを丁寧に描写した。どの場所をモチーフに描いたか分かるほどとことん描き込んだ背景。小道具に現実感を浮かび上がらせる一方で、2人のせつない物語には憧憬(しょうけい)やファンタジーが宿り、手描きしたという多彩な雨の表現が情感たっぷりだ。絵の力が伝わってきて、スタッフの努力がしのばれる。クライマックスは少々ベタで気恥ずかしいが、若い世代はどう感じるのだろうか。エンディング曲は秦基博さんが大江千里さんの「Rain」をカバーした曲が採用されている。TOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京都港区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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