注目映画紹介：「上京ものがたり」　西原理恵子のマンガが原作　北乃きいが芯の強い主人公を好演

　人気マンガ家・西原理恵子さんのエッセーマンガが原作の映画「上京ものがたり」（森岡利行監督）が24日、公開された。絵を描くことが大好きな女の子が、上京してマンガ家としてデビューするまでの成長物語を、北乃きいさんが演じている。同じく西原さんの同名マンガが原作の映画「女の子ものがたり」に続いて森岡監督がメガホンをとった。

ウナギノボリ

「光る君へ」より昔！　最も古い時代の大河ドラマは？　1976年「風と雲と虹と」のあらすじ

　美大生の菜都美（北乃さん）は、東京で家賃を払うのがやっとの生活を送っていた。友だちから時給のいいバイトとしてキャバクラを紹介され、慣れないホステスの仕事を始め、そこで出会った良介（池松壮亮さん）と一緒に暮らすようになる。良介は定職につかずに家でゴロゴロしてばかり。菜都美はバイト先でセクハラをされて顔面マヒになったり、美大での成績が最下位になったりして上京したことを後悔する。しかし、シングルマザーの先輩ホステス・吹雪（瀬戸朝香さん）と娘の沙希（谷花音ちゃん）に応援され、自分なりの戦い方でマンガ家として頑張ろうと決心。出版社に売り込みに回り始める……という展開。

　先ごろ、作家の林真理子さんの青春時代がテレビで紹介されていたが、この映画の主人公・菜都美と共通するところがあると感じた。2人とも自分を信じて貪欲に、コツコツと目標に向かって前進していく。女性の粘り強さを感じずにはいられないが、今作の中の男性、菜都美の彼氏の良介が完全にヒモ状態だから、なおさら際立っている。故郷での高校時代の描写は夢の中にいるような語り口で、見る側も菜都美の夢を無理なく応援できる。マンガで周囲を楽しませる一方で、出版社にアタックするバイタリティーを持つ菜都美。ホンワカしていながらも芯は強い魅力的なヒロインを北乃さんが好演している。夢を持つ人を応援する、爽やかな一作。24日からシネマライズ（東京都渋谷区）ほか全国で公開中。（キョーコ／毎日新聞デジタル）