マンガ質問状:「アド・アストラ −スキピオとハンニバル−」 ポエニ戦争描く一大戦記

カガノミハチさんの歴史マンガ「アド・アストラ −スキピオとハンニバル−」(集英社)
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カガノミハチさんの歴史マンガ「アド・アストラ −スキピオとハンニバル−」(集英社)

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、紀元前の地中海世界、ローマとカルタゴの戦いを描くカガノミハチさんの歴史マンガ「アド・アストラ −スキピオとハンニバル−」です。集英社「ウルトラジャンプ」編集部の山内智(やまうち・さとし)さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 「第2次ポエニ戦争」と聞いてピンとくる方は、実はあまりいらっしゃらないのではないかと思います。しかし「ハンニバル」なら、どこかで名前くらいは聞いたことがあるのでは?(映画に出てくるあの人の方かもしれませんけれど……)実はこのハンニバル、歴史に名を残す超一流の戦術家で、現代でも研究対象とされているのだとか。そんな彼と、彼を相手に戦い、国を守ったローマの英雄・スキピオのライバル関係を描く、一大戦記です。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 ウルトラジャンプの漫画賞で準入選を受賞した後、連載用ネームの方向性について打ち合わせを重ねる中で、セリフの切れとテンポのよさ、そして気持ちのいい空間を描ける画風が、歴史モノを描くのに適しているのではと考えました。また、実在のモデルがいるので、キャラ立てに難のあったカガノ先生がキャラ描写を学べるのではないかと考えました。

 −−編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください?

 初連載のため、アシスタントを入れての仕事ペースが分かりませんでした。ネームは3話目まで上げていたものの、原稿の貯金のない状態で走り出したのですが、作画に予想以上に時間がかかり、いきなり冷や汗をかきました…。カガノ先生は元々、かなり丁寧なネームを描くタイプだったのですが、ネーム作業が原稿作業と並行し始めた頃からは、キャラは○に名前を入れただけ、背景は雰囲気だけの、簡単なものに変えてもらいました。

 −−今後の展開は?

 連載最新話で描かれているカンナエの戦いは第2次ポエニ戦争の一つの山場。2000年の時をへてなお研究対象となるほどのハンニバルの知謀には驚かされるばかりです。そんな怪物を相手にスキピオはどう立ち向かうのか。「学ぶ(まなぶ)」は「学ぶ(まねぶ)」であり、「真似る」と語源を同じくするという話を聞いたことがありますが、スキピオの柔軟に「学ぶ」姿勢が歴史を動かしていきます。

 −−読者へ一言お願いします。

 元々の歴史好きというタイプではなかったカガノ先生ですが、膨大な資料と格闘しながら偉人達の物語に挑んでいます。まだ拙い部分もありますが、短い期間で絵も物語もどんどん成長しているので、スキピオの成長と重ね合わせて見守っていただければ幸いです。応援よろしくお願いいたします。

 集英社 ウルトラジャンプ編集部 山内智

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