スター・トレック:J.J.エイブラムス監督に聞く グリーンバックを多用せず「本物を求めた」

最新作「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の公開に合わせて来日したJ.J.エイブラムス監督
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最新作「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の公開に合わせて来日したJ.J.エイブラムス監督

 映画「スター・トレック」シリーズの最新作「スター・トレック イントゥ・ダークネス」が23日に公開された。このほどJ.J.エイブラムス監督、カーク船長役のクリス・パインさんらが来日。東京・六本木の「nicofarre(ニコファーレ)」での記者会見、東京都内でのジャパンプレミアの合間を縫って、インタビューに応じた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 「スター・トレック イントゥ・ダークネス」は、西暦2259年が舞台。パインさん演じるUSSエンタープライズの船長ジェームズ・T・カークと乗組員たちが、地球をかつてない危機に陥れるジョン・ハリソン司令官(ベネディクト・カンバーバッチさん)に立ち向かっていくというSFアクションだ。

 このシリーズは約50年前にテレビ放映され、1970~90年代にかけては映画も製作された「宇宙大作戦」あるいは「スタートレック」が原案となっている。しかし、66年生まれのエイブラムス監督は、今でこそこのシリーズの大ファンだが、子供時代は「あの静かでゆっくりとしたペースの、知的なストーリー」の世界に入り込めなかったという。というのも、エイブラムス監督自身は、「ペースが速くワクワクできる作品が好き」だからだ。その言葉通り今作も、冒頭からカークと軍医マッコイ(カール・アーバンさん)が、追ってくる原住民を振り切り海に向かってダイブしたり、カークとハリソンがものすごいスピードで宇宙空間を遊泳し船から船に乗り移るシーンがあったりなど、疾走感にあふれ、ワクワクさせられるシーンが満載だ。

 また、SF映画の場合、グリーンバックを使用した撮影が多用されるが、エイブラムス監督はできる限り“本物”を求める。今作でもその姿勢は貫かれ、「戸外のシーンは、太陽光線がリアルに見えるよう、できる限り日中、日があるところで撮影した」という。また、惑星ニビルのジャングルや火山の内側、終盤のサンフランシスコのシーンで使われる風景や船など14のセットを、ロサンゼルスのプラヤビスタにある巨大格納庫内に作り、グリーンバックには頼らないようにしたと明かす。

 ところで、エイブラムス版「スター・トレック」シリーズには、「『スター・ウォーズ』のスピ−ド感を持ち込んだ」という声がある。それについてエイブラムス監督は「それは僕が言った言葉ではないが、そういうリズムで作りたかったことは確か」と否定はしない。そして「確かに『スター・ウォーズ』のペースは速いが、もっと速い映画はある。僕らが『スター・トレック』を作っていて何が楽しかったかというと、僕自身が愛してやまないワクワクするようなペースやそういうエネルギーを注入できたこと。そちらのほうが、ずっとスリルがあることだと僕は思っている」と説明する。

 くしくも先ごろ、エイブラムス監督が「スター・ウォーズ」新シリーズの監督に就任することが報道された。「『M:i:3』のときも『スター・トレック』のときもそうだったが、まさか自分が『スター・ウォーズ』の監督をやることになるとはまったく予想していなかった」と驚きを隠さない。

 「スター・トレック」も「スター・ウォーズ」も、ともにSF映画を代表する作品。しかしその間には明確な差があると話す。「『スター・ウォーズ』はおとぎ話だが、『スター・トレック』はクラシックなSF。『スター・トレック』の場合は、すべてを科学で証明できなければいけないが、『スター・ウォーズ』は、仕事をしている人々の横にドアがあって、その先に宇宙が開けていてもまったく構わない。それはフォースのせいにできる(笑い)。そんなふうに、トーンもキャラクターも世界観も違う。そもそも、『スター・ウォーズ』は遠く離れた銀河系での話だが、『スター・トレック』は我々の未来の話。設定からして違う」と分析。

 その上で、今回の「スター・トレック イントゥ・ダークネス」は、「カークとスポックの関係に始まり、未知への旅、対立、自己犠牲、ファミリーのあり方、愛、そういったものすべてを内包している」と人間ドラマとしての魅力にも言及。そして、「『スター・トレック』ファンだけでなく、すべての映画ファンが、(シリーズを知らずとも)これだけを見ても十分楽しめるように作ったつもりだ」とアピールした。映画は全国で公開中。

<プロフィル>

 1966年生まれ、米ニューヨーク市出身。90年、「ファイロファックス トラブル手帳で大逆転」(日本未公開)で脚本家デビュー。91年、「心の旅」、98年、「アルマゲドン」などの脚本を担当し、98年の「フェリシティの青春」の企画、製作総指揮を務めテレビ界に進出。続く2001年からの「エイリアス」が大ヒットシリーズとなり、映画「M:i:3」(06年)の監督に抜てきされ、映画監督デビューを果たす。ほかに「LOST」(04~10年)、「FRINGE/フリンジ」(08~13年)、「パーソン・オブ・インタレスト」(11年~)といったテレビシリーズを手掛ける一方、「スター・トレック」(09年)、「SUPER8/スーパーエイト」(11年)といった映画を製作。先ごろ「スター・ウォーズ」新シリーズの監督への就任が報道された。

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