ペナルティ・ヒデ:小説デビュー作を語る 第2弾もすでに完成「年内に出せたら…」

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 お笑いコンビ「ペナルティ」のヒデさんが、7月31日に本名の「中川秀樹」名義で長編小説「四季折々 アタシと志木の物語」(竹書房)を発売し、小説家デビューを果たした。同作はヒデさんが構想4年、執筆4年をかけて完成させた原稿用紙900枚超の上下巻(上巻1260円、下巻1575円)の大作で、「アタシ」こと松本恭子が志木護という社長と2人だけの「四季」という会社で、依頼者の「ある願い」をかなえるという感動作。すでに第2弾の小説も完成していて、現在は第3弾を執筆中というヒデさんに、小説執筆の経緯やデビュー作の手応え、今後の活動などを聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 −−小説出版の経緯は?

 もともと本が好きで、20代でいつか小説を出せたらというぼんやりとした夢を描いていたんです。当時、仕事の量も少なく、暇だったので、お笑いで世に出るまでの準備期間というか、筋トレというかを兼ねて小説を書いていたんですけど、右も左も分からず、とても世に出せないレベルで……。30代、40代に向けてどうしていこうかというのがタレントとしてあって、それで嵐の二宮君が「やってみたら」と背中を押してくれたのがきっかけですね。

 −−相方のワッキーさんは読んでくれましたか?

 相方は「上巻を読み終えた」と。ただ、8割ウソじゃないかな。「内容どうだった?」って聞いたら「よかった」と。「特にどこが?」って聞いたら「全体的に……」と。読んでないなと思いましたね(笑い)。(読んだと言ったのは)彼なりの愛情ではないかと。

 −−他の芸人仲間たちはどうですか?

 先輩方にもお渡ししました。東野幸治さんにお渡しして……できれば(人気作家の)東野圭吾さんに渡したかったんですけど(笑い)。ナインティナインの岡村(隆史)さんにも「ちょうだいや」って言われてお渡しして……。皆さん楽しみにしていると。ただ、雨上がり決死隊の宮迫(博之)さんだけは、「2017年までには読む」と。そのころには僕が何を書いたか忘れてしまうのでは……(笑い)。ただ、みなさんから「感動した」と言っていただいています。

 −−高齢者の思い出話や昭和初期の情景が登場します。執筆するにあたり、調べものをしたり、いろいろと苦労したのでは?

 知らないことを吸収する作業は苦手ではないし、どんどん勉強したいという時期。新人ですから。書かなかったことは次に書けるんじゃないかと思うと、別に苦ではなかったですね。

 −−物語の「四季」という会社は、依頼者の願いをかなえるのが仕事で、「忘れられない人、大切な人」などへの感謝や謝罪がテーマですが、もし実際に「四季」が存在したら何を依頼したいですか?

 僕はおばあちゃん子で、18歳までご飯やお弁当を作ってもらっていたんです。20歳のときに他界したんですけど……もっとおばあちゃん孝行したかったなと思います。祖母が亡くなる直前、2人きりで話す機会が1時間くらいあったんです。祖母は「昔、河童を見た」って言ったんです。なんてユーモアがある人なんだろうって。ウソなのかな……ウソならとんでもない置き土産ですよ。祖母こそコメディアンになればよかったのに。ひょっとしたら「お前、芸人になって行き詰ったら、この話をしなさい。そこそこウケるよ」って後押ししてくれていたのかもしれません。

 −−デビュー作は執筆4年だそうですが、第2弾、第3弾は考えていますか?

 デビュー作は4年前に1行目を、というかタイトルを打ちました。最初は「四季」ではなく「死期」だったんですが、ネガティブなイメージがあるとアドバイスをいただいて「四季」にしました。

 実はもう第2弾は書き終えて、(第1弾を出版した)竹書房さんにはお渡ししてあるんですけど……。その後まったく連絡がないんです。やってしまったのかな、と(笑い)。淡い期待としては年末あたりに出せたらいいなと思っています。第2弾は面白い感じに仕上がっていて、ドラマ化、映画化が見えています……。ぜひ、(まんたんウェブに)プッシュしていただいて、お金も出してもらえたら(笑い)。今は第3弾をスマホで打っています。

 −−作家さんはどんな人が好きですか?

 浅田次郎先生や大沢在昌先生。読んでいてこんなハラハラするの?って思いましたね。二次元でこんなに心躍ったことがないです。学生時代にそれで好きになりました。ちなみに東野圭吾さんはサッカーで例えると……ユーティリティープレーヤーで、確実にゴールを取るという意味では(スペイン・FCバルセロナ所属の)メッシ選手ですね。自分はBチームにも入っていない、試合にも出ていない……ユースですよ(笑い)。

 −−ご自身は小説家として向いていると思いますか?

 判断できないけど、本が好きなので、そういった意味では向いているのかなと思います。ボクシングの辰吉丈一郎さんが「ボクシングが好きという才能を神様からもらった」っておっしゃっていましたけど、辰吉さんの言葉をお借りするなら、僕は小説家として、好きという才能だけはもらったのかな……と思います。

 −−読者にメッセージを

 芸人として僕を知っている人は、その先入観を捨てて、一人の男が真剣に、小説に真摯(しんし)に向き合って懸命に作ったというので手にしていただけたら。(上巻は)1260円……人生で考えたら安いですよね。ぜひ上巻だけでも手にとって、面白いじゃん!って下巻にいってもらえたら。上下巻買わなきゃいけないんでしょ?と気になさらずに……。電車で読むときは、できればブックカバーを外して、不自然に(周囲に)タイトル見せて読んでください(笑い)。

 <プロフィル>

 なかがわ・ひでき 1971年4月7日生まれ、千葉県出身。市立船橋高校時代にサッカー選手としてインターハイで優勝。専修大学在学時にJリーグからスカウトを受けるが、銀座7丁目劇場のオーディション合格を機会にお笑いの道に進む。普段は吉本興業のお笑いコンビ「ペナルティ」のツッコミ担当・ヒデ。相方のワッキーは高校時代のサッカー部の後輩。今年7月31日に小説「四季折々 アタシと志木の物語」で小説家デビュー。尊敬する作家は浅田次郎さん、大沢在昌さんら。

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